一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ファーマー液について

質問者:   中学生   元理科研究員
登録番号2674   登録日:2012-07-08
 私は今年の夏休みの自由研究で、玉ねぎまたはネギを用いて細胞分裂について調べようと思っています。その為インターネットで調べていると方法がいくつか出てき読んでみました。その内容についての質問です。

 内容内に”ファーマー液”とあったのですが、これはどのような役割をするのですか。
 また、”ファーマー液(氷酢酸:エタノール=1:3)”という記載があったのですが、これは氷酢酸とエタノールを1:3の割合で混ぜるということなのでしょうか。
 ”保存液70%エタノール”は、エタノールではなく消毒用アルコールではダメでしょうか。
 この実験で塩酸につけてから染色するタイプと、染色してから塩酸につけるタイプと二種類あるのですが、どちらの方が良いと思いますか。

 上記四つについて回答よろしくお願いします。
元理科研究員殿

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。質問にお答えします。

 1.ファーマー液の役割  生物の組織を顕微鏡等で観察する場合、材料を切り取って染色したりして、実際に観察するまでに時間がかかり,その間に分解酵素や混生している細菌などによって細胞の分解おこります。また、材料の物理的強度が弱いため、色色な処理の間に材料が崩れてしまったりすることがります。そこで、一般にはまず観察しようとする材料に「固定」という化学処理を行います。固定することにより、材料とする組織の現状がそれ以上変化(劣化)することを防ぐことが出来ます。つまり、そのままの状態に保つことができます。また、柔らかい組織に物理的な強度を持たせることも出来ます。このような試薬を「固定液」といい、さまざまな種類の固定液が、観察する組織の種類によって選ばれ、用いられています。ファーマー液はそのような固定液の一種で、植物組織の簡単な固定に良く使われます。

 2.その通りです。

 3.消毒用アルコールは、日本薬局方で規定された製品でも、エタノールの含有量は70%位なので(消毒にはこの濃度がよい)固定試薬の作成には望ましくありませんが、保存用エタノールとしてはいいかもしれません。ただし、市販の消毒用エタノールには他の薬品が混じっていることもあります。イソプロパノールという別のアルコールを混ぜていることが多いです。イソプロパノール自体も消毒用アルコールです。

 4.組織を塩酸で処理するのは、固定してある組織をある程度解離させて、細胞が観察され易いようにするためです。塩酸処理と染色の順序はどちらでもいいのですが、始めに塩酸処理してしまうと、組織によっては染色の過程で組織が解離しすぎてしまうこともあります。いっぽう、塩酸処理は染色した色素がとれてしまう危険があるので、染色後の塩酸処理を長くするとよくないかもしれません。
 タマネギの細胞分裂を観察したいということですので、インターネット上で詳しく丁寧に実験のやりかたを説明しているサイトがありますので、それを参考にするとよいでしょう。サイト名は「タマネギの細胞分裂を全員が授業で観察する」です。
http://www2e.biglobe.ne.jp/shinzo/jikken/saibou/saibou.html

さて、以上は質問への回答ですが、塩酸やエタノール(95%以上)は簡単には購入できません。ことに,塩酸は危険物です。氷酢酸もそうです。それに染色用試薬などはどう調達するのですか。自由研究を学校の理科室で先生の指導のもとにおこなうのならばよいのですが。注意して実験をやって下さい。中学生だけれども、ハンドルネームを元理科研究員と名乗っておられるからには、こういうことの基本的な常識は勉強されているとは思いますが。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-07-13
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