一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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盗葉緑体現象について

質問者:   会社員   さくらた
登録番号2676   登録日:2012-07-09
オルガネラの起源(共生説)について学生時代から興味があったのですが、最近になって動物であるウミウシが「盗葉緑体」と呼ばれる現象により、体内に藻類の葉緑体を保持し光合成させているということを知り非常に驚きました。これについて以下の質問をさせてください。

・現在、この盗葉緑体現象というのは葉緑体研究者の関心をひろく集めるようなテーマなのでしょうか? 
・盗葉緑体現象は、細胞の進化(いわゆる細胞内共生説)の研究の手がかりになるというように考えられているでしょうか?
・ウミウシの研究から「光合成のできる動物の開発」といった方向性で取り組んでいる研究者の方はいるのでしょうか?

うまく書けませんでしたが、つまり、盗葉緑体の研究がなんらかの普遍性をもったテーマと捉えられているのか、あるいは例外的な現象にすぎないとして、一部の研究者だけが興味をもっているものなのか、そういったところが知りたいというのが質問の主旨です。

よろしくお願いいたします。
さくらた様

ご質問承りました。基礎生物学研究所の前田太郎博士にお伺いしたところ下記の回答をいただきました。お役にたてば幸いです。



(前田太郎先生の回答)
盗葉緑体現象が、普遍性をもった研究テーマとして扱われているかというご質問、ありがとうございます。

まだ本現象自体が研究者間でも十分知られておらず、共通した見方というものが形成される前の段階にあるという印象です。
すくなくとも、私など、この現象を研究している人たちは、遺伝子の水平伝播現象やオルガネラ制御などに関連する研究テーマと思っております。
また、ご質問と同じ内容を、学術集会や一般の方との懇親会などで、多くの方から頂きますので、学術的、社会的な関心は高いと感じています。

・ウミウシの研究から「光合成のできる動物の開発」といった方向性で取り組んでいる研究者の方はいるのでしょうか?

私(基生研 前田)やアメリカのRumpho先生などがその見方から研究をしております。他にもこの分野ではドイツのW.ANdgele先生や岐阜大学の山本義治先生などがおられます。

盗葉緑体現象は60年代に、岡山大学の川口四郎先生によって発見された現象で、歴史は比較的あるのですが、分子レベルでの機構研究としては、まだ始まったばかりです。

以上。

前田 太郎(基礎生物学研究所)
JSPP広報委員長、基礎生物学研究所
長谷部 光泰
回答日:2012-07-13
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