質問者:
中学生
女子マネ希望者
登録番号2681
登録日:2012-07-15
オシロイバナの白と黄色の花の咲き分けについての質問です。みんなのひろば
オシロイバナの咲き分けについて
昨年の学校の夏の自由研究で、200ヵ所以上の場所を訪ねて、オシロイバナの咲き分けを観察しました。そこで白と赤、赤と黄色の様々な咲き分けになっている花を見かけました。しかし、白と黄色の花の咲き分けについてのみ発見することができませんでした。赤、白、黄色の群生地もありましたが、その群生地でも白と黄色の咲き分けは見つけられませんでした。
疑問だったため、白の株に黄色の花を、黄色の株に白の花を人工受粉させた種を採取しました。その種を今年6月下旬に家の庭に撒きました。そうしたら、黄色の株に白の花を人工受粉させたものは7粒中7粒発芽し、今順調に育っています。ただし、白の株に黄色の花を受粉させた8粒の種は1粒も発芽しませんでした。こうなった原因は何が考えられますか。人工受粉は、同時期に行い、種の保存も同じ場所で行い、種まきも同時に行いました。
この質問コーナーの「オシロイバナの色素について」で小関先生が白と黄色の咲き分けも存在すると書いていらっしゃいましたが、非常に珍しい咲き分けなのではないかなと思います。白と黄色の咲き分けが起こりにくい理由を知りたいと思います。あわせて、どうしたら白と黄色の咲き分けの花を育てることが出来るのかも知りたいと思います。
御回答どうぞ宜しくお願い致します。 女子マネ希望者
女子マネ希望者 さん:
たいへんお待たせしました。回答は東京農工大学の佐々木伸大先生から頂きました。佐々木先生は小関先生とともに花色の研究をされている新進気鋭の研究者です。ご質問はかなり難しい問題で佐々木先生も「結局のところ、原因ははっきりとは分からない。というのが素直な気持ちです。」と添え書きされておられます。メンデルの遺伝法則にしたがって説明されていますので、この法則はよく勉強して下さい。
【佐々木先生の回答】
質問2060で解説されているように、オシロイバナの花色はベタレインと呼ばれる色素によって発色しています。このベタレイン色素による花色に関わる遺伝子として、赤ビートやマツバボタンなどで古くから研究がなされてきました。オシロイバナでもその花色について遺伝学的な解析も行われています。ベタレイン色素は大きく分けて黄色と赤色の色素があり、その発色には2つの遺伝子が関わっていると考えられています。これらのうちの1つは赤色の発色に関わっており、ここではR(Red遺伝子)とします。また、もう一つは黄色と赤いずれの色素を合成するのに必要な遺伝子で、ここではC(Color あるいは Chromophore: 色素分子のなかの色を出す骨格を意味する単語)とします。そうすると、赤色を発色する場合には、R遺伝子とC遺伝子がともに優性(正常に機能するという意味)です。黄色を発色する場合にはR遺伝子が劣性(遺伝子として正常に機能しないという意味、劣性の遺伝子を表す場合、「r遺伝子」のように小文字で表します。)すなわち、C遺伝子が優性でないと色を持たない、つまり白色となります。オシロイバナの花色も同様の遺伝子に支配されることが知られております。オシロイバナは基本的には白・黄・赤の3色の花色を持ちます。これらの花色を持つオシロイバナの遺伝型を考えると、オシロイバナは2倍体ですので、白色では rrcc, RRcc, Rrcc の3通りとなります。また、黄色ではrrCC, rrCc の2通り、赤色ではRRCC, RrCC, RRCc, RrCc の4通りとなります。
さて、次に斑入りができる原因ですが、登録番号2060の解説にありますように、R遺伝子あるいはC遺伝子にトランスポゾンと呼ばれる「動く遺伝子」が挿入され、それが抜けることによって各色が復帰します。今このようにトランスポゾンが入った遺伝子を r’ , c’ と表すとすると、白地に赤はR-c’c (あるいはR-c’c’ ということもあるかもしれません。なお、- は優性、劣性を問わないという意味です。) 、黄地に赤ではr’rC- と表されます。さてご質問の白地に黄の遺伝型は rrc’c (あるいは rrc’c’) となります。ですので、c遺伝子についてだけ考えると、このような組み合わせになる確率自体は白地に赤の花の時と同程度の頻度で現れてよいはずです。このときrr という組み合わせが必要なのですが、なぜだかはわかりませんが、このような遺伝型をもつオシロイバナを見かける頻度は低いようです。近くで見つかる白花についても調べたことがあるのですが、R-cc のものばかりで、rrCCのものは見つかりませんでした。しかし、黄色の花の遺伝型はrrC-のはずですし、実際にrrccの白色のオシロイバナも、白地に黄のオシロイバナも存在しています。それらの生育が悪いといったことは見受けられませんので、もしかしたら白地に黄というのは見た目ではあまり映えないので、これまでに人によって選ばれて(保存されて)こなかったということかもしれません。
オシロイバナ(のみならず他の植物)の斑入りについては元法政大学教授であった笠原基知治先生が執筆された「斑入り植物のはなし」(http://beauty.geocities.jp/dgdrb182/)に詳しく解説されています。ご興味がある様でしたらぜひ参考にされてください。
佐々木 伸大(東京農工大学大学院)
たいへんお待たせしました。回答は東京農工大学の佐々木伸大先生から頂きました。佐々木先生は小関先生とともに花色の研究をされている新進気鋭の研究者です。ご質問はかなり難しい問題で佐々木先生も「結局のところ、原因ははっきりとは分からない。というのが素直な気持ちです。」と添え書きされておられます。メンデルの遺伝法則にしたがって説明されていますので、この法則はよく勉強して下さい。
【佐々木先生の回答】
質問2060で解説されているように、オシロイバナの花色はベタレインと呼ばれる色素によって発色しています。このベタレイン色素による花色に関わる遺伝子として、赤ビートやマツバボタンなどで古くから研究がなされてきました。オシロイバナでもその花色について遺伝学的な解析も行われています。ベタレイン色素は大きく分けて黄色と赤色の色素があり、その発色には2つの遺伝子が関わっていると考えられています。これらのうちの1つは赤色の発色に関わっており、ここではR(Red遺伝子)とします。また、もう一つは黄色と赤いずれの色素を合成するのに必要な遺伝子で、ここではC(Color あるいは Chromophore: 色素分子のなかの色を出す骨格を意味する単語)とします。そうすると、赤色を発色する場合には、R遺伝子とC遺伝子がともに優性(正常に機能するという意味)です。黄色を発色する場合にはR遺伝子が劣性(遺伝子として正常に機能しないという意味、劣性の遺伝子を表す場合、「r遺伝子」のように小文字で表します。)すなわち、C遺伝子が優性でないと色を持たない、つまり白色となります。オシロイバナの花色も同様の遺伝子に支配されることが知られております。オシロイバナは基本的には白・黄・赤の3色の花色を持ちます。これらの花色を持つオシロイバナの遺伝型を考えると、オシロイバナは2倍体ですので、白色では rrcc, RRcc, Rrcc の3通りとなります。また、黄色ではrrCC, rrCc の2通り、赤色ではRRCC, RrCC, RRCc, RrCc の4通りとなります。
さて、次に斑入りができる原因ですが、登録番号2060の解説にありますように、R遺伝子あるいはC遺伝子にトランスポゾンと呼ばれる「動く遺伝子」が挿入され、それが抜けることによって各色が復帰します。今このようにトランスポゾンが入った遺伝子を r’ , c’ と表すとすると、白地に赤はR-c’c (あるいはR-c’c’ ということもあるかもしれません。なお、- は優性、劣性を問わないという意味です。) 、黄地に赤ではr’rC- と表されます。さてご質問の白地に黄の遺伝型は rrc’c (あるいは rrc’c’) となります。ですので、c遺伝子についてだけ考えると、このような組み合わせになる確率自体は白地に赤の花の時と同程度の頻度で現れてよいはずです。このときrr という組み合わせが必要なのですが、なぜだかはわかりませんが、このような遺伝型をもつオシロイバナを見かける頻度は低いようです。近くで見つかる白花についても調べたことがあるのですが、R-cc のものばかりで、rrCCのものは見つかりませんでした。しかし、黄色の花の遺伝型はrrC-のはずですし、実際にrrccの白色のオシロイバナも、白地に黄のオシロイバナも存在しています。それらの生育が悪いといったことは見受けられませんので、もしかしたら白地に黄というのは見た目ではあまり映えないので、これまでに人によって選ばれて(保存されて)こなかったということかもしれません。
オシロイバナ(のみならず他の植物)の斑入りについては元法政大学教授であった笠原基知治先生が執筆された「斑入り植物のはなし」(http://beauty.geocities.jp/dgdrb182/)に詳しく解説されています。ご興味がある様でしたらぜひ参考にされてください。
佐々木 伸大(東京農工大学大学院)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-08-01
今関 英雅
回答日:2012-08-01