一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ランタナの花の色変化について

質問者:   大学生   aquamarine
登録番号2692   登録日:2012-07-21
先日友人からランタナという植物の写真を見せてもらい、初めてこの植物を知りました。
調べると花が咲き始めると色が様々に変化するのでシチヘンゲという別名があることが分かりました。

この色変化をもたらす機構はどのようなものなのでしょうか。
図鑑・辞典などで調べましたが、具体的に色変化の仕組みについては記述がなかったので質問させて頂きました。

普通花の色などは遺伝の法則に基づいて一色に決まり、例外的にアジサイのように土壌のpHで決まるものがあることは知っていましたが、同じ株の花でこのように何色も色変化を起こすものは初めて見ました。

遺伝子の発現の仕方でこのように変化しているのでしょうか?

よろしくお願い致します。
aquamarine さん

ご質問をありがとうございました。
この質問にはアントシアニンなどの花色の化学にお詳しい吉田久美先生(名古屋大学)が下記の回答文をご用意くださいました。ご参考になさって下さい。



(吉田先生からの回答)
お問い合わせいただきましたランタナの花色変化に関してですが、少し調べましたので、お返事いたします。

ランタナにもいろいろな色があり、それがまたどう変わるかも種々あるようです。よく見かけるものは、黄色からオレンジ、赤紫への変化、あるいは、クリーム色からピンクでしょうか。

いずれも、花弁の色素がカロテノイド系の黄色色素から、アントシアニン系の赤〜紫色色素に変化したもののようです。なぜ変わるのかという機構はわかっていませんが、少なくとも、カロテノイドが分解し(減少し)、アントシアニン生合成系が働き出してアントシアニンが蓄積していくということは言えるかと思います。酔芙蓉をご存じでしょうか。これは無色(白色)の花が夕方から赤く染まっていくのですが、これもアントシアニンの生合成が夕方になると始まることで起きます。

ランタナの花色変化ですが、実は、ポリネーター(受粉媒介者、昆虫)との関わりで非常に面白いことがわかっています。この色変化と、昆虫がどの色の花を好んで集まるかを調べた研究者がおります。黄色から橙、赤へと変化する花の場合、未受粉の黄色の花が好まれ、既に受粉した赤い花は好まれないということです。これには、蜜やにおいも関連しているようです。

開花からの時間経過で遺伝子の発現が変わるのか、あるいは、受粉という現象がきっかけで変化が起きるのかは、まだ分かっていないようですが、ともかくも、身近な現象で、その仕組みがまだまだ明らかにされていないことはたくさんありますし、ぜひ、このようなことに着目して新しい研究にチャレンジいただければうれしく思います。

吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-08-01
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