質問者:
その他
しのき
登録番号0270
登録日:2005-06-01
植物の分化全能性を確かめる実験をしたいのですが、植物ホルモンを入れずに手軽に器官培養ができる植物はないでしょうか?
みんなのひろば
植物の器官培養について
しのき様
植物の器官培養についてのの質問に対する回答が大変遅くなりすみません。
植物細胞の分化全能性を確かめる実験は簡単ではありません。それを証明するには、米国のF.C.Stewardら(1964年)がおこなったように、分化した細胞をばらばらにして、1個の細胞をとりあげ、そこから全個体を再生させなければなりません。この操作は実験装置と技術が必要です。また、分化には必ず植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)が必要です。そういうわけで、ご希望のように手軽に植物ホルモンなしで、分化全能性の実験ができる材料は現在のところ知られていません。
しかし、分化全能性をそんなにげんみつに証明するのでなく、分化した組織や器官から新しい個体を再生することは容易です。しかし、試験管培養でするとなると、一般には植物ホルモンが必要です。しかし、用いる材料自体が必要な植物ホルモンを自前で生産できているばあいは、そとから植ホルモンの供給をしなくても良い場合があります。もっとも簡単な場合は、例えばアフリカンヴァイオレットの葉を一枚切り取って培養土に挿しておくと、新しい芽が分化してきます。そういう例は多数あります。
培養する条件での実験を秋田県立大学生物資源科学部の我彦広悦先生に回答していただきましたので以下に紹介します。
1.「分化全能性」の意味を厳密にとらえるとすると一つの細胞から培養しなければならないでしょう。
2.私がやっているアグロの腫瘍遺伝子は培地に植物ホルモンを含まずに植物体(タバコ)→カルス→植物体のサイクルがとれるのでご依 頼の目的には沿っていると思います。植物体全体では以上の事が既に分かっていますが、これを広げていろいろな器官について同じことが出来るかどうかやってみるのは面白いかもしれません。しかし、問題は遺伝子組み換え体だということです。本実験を行うには教育目的(既に決まっている簡単な実験)以外では安全委員会を作って審査してもらわなければなりません。
3.やはりクラウンゴールですが、野外のクラウンゴールを採取してホルモンフリー培地で培養、継代して行きますと植物によっては茎葉が分化してきます。例えば大潟村にある交雑ヤマナラシ(アスペン)などはそうです。
4.ある種のCAM植物(ex. オボロヅキ)の葉は茎から切り離してそのまま置いておくだけ(つまり培地が要らない)で、葉の付け根から発根、発芽し、ひいては元の植物体になります。まさにかわいいミニチュアです。本学の岩崎先生が学生と研究してます。
5.昨年は秋田県は強風のため海からの塩害で樹木が相当やられました。そのせいで本年はその傷害部分以外から葉茎がたくさん芽を出しています。樹木をばっさり切って、形成層あたりから傷痍組織→茎葉分化の過程を観察するというのはどうでしょうか。
我彦 広悦(秋田県立大学生物資源科学部)
植物の器官培養についてのの質問に対する回答が大変遅くなりすみません。
植物細胞の分化全能性を確かめる実験は簡単ではありません。それを証明するには、米国のF.C.Stewardら(1964年)がおこなったように、分化した細胞をばらばらにして、1個の細胞をとりあげ、そこから全個体を再生させなければなりません。この操作は実験装置と技術が必要です。また、分化には必ず植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)が必要です。そういうわけで、ご希望のように手軽に植物ホルモンなしで、分化全能性の実験ができる材料は現在のところ知られていません。
しかし、分化全能性をそんなにげんみつに証明するのでなく、分化した組織や器官から新しい個体を再生することは容易です。しかし、試験管培養でするとなると、一般には植物ホルモンが必要です。しかし、用いる材料自体が必要な植物ホルモンを自前で生産できているばあいは、そとから植ホルモンの供給をしなくても良い場合があります。もっとも簡単な場合は、例えばアフリカンヴァイオレットの葉を一枚切り取って培養土に挿しておくと、新しい芽が分化してきます。そういう例は多数あります。
培養する条件での実験を秋田県立大学生物資源科学部の我彦広悦先生に回答していただきましたので以下に紹介します。
1.「分化全能性」の意味を厳密にとらえるとすると一つの細胞から培養しなければならないでしょう。
2.私がやっているアグロの腫瘍遺伝子は培地に植物ホルモンを含まずに植物体(タバコ)→カルス→植物体のサイクルがとれるのでご依 頼の目的には沿っていると思います。植物体全体では以上の事が既に分かっていますが、これを広げていろいろな器官について同じことが出来るかどうかやってみるのは面白いかもしれません。しかし、問題は遺伝子組み換え体だということです。本実験を行うには教育目的(既に決まっている簡単な実験)以外では安全委員会を作って審査してもらわなければなりません。
3.やはりクラウンゴールですが、野外のクラウンゴールを採取してホルモンフリー培地で培養、継代して行きますと植物によっては茎葉が分化してきます。例えば大潟村にある交雑ヤマナラシ(アスペン)などはそうです。
4.ある種のCAM植物(ex. オボロヅキ)の葉は茎から切り離してそのまま置いておくだけ(つまり培地が要らない)で、葉の付け根から発根、発芽し、ひいては元の植物体になります。まさにかわいいミニチュアです。本学の岩崎先生が学生と研究してます。
5.昨年は秋田県は強風のため海からの塩害で樹木が相当やられました。そのせいで本年はその傷害部分以外から葉茎がたくさん芽を出しています。樹木をばっさり切って、形成層あたりから傷痍組織→茎葉分化の過程を観察するというのはどうでしょうか。
我彦 広悦(秋田県立大学生物資源科学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-07-03
勝見 允行
回答日:2009-07-03