一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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あさがおの種を切ってみたら

質問者:   小学生   ゆい
登録番号2701   登録日:2012-07-27
夏休みの自由研究で「朝顔の種を切ってみたらどうなるか?」をやっているのですが、縦に半分、横に半分、3分の2、3分の1、普通の種を各4つずつまいてみました。出ないものもありましたが、3分の1以外の種は成長しています。普通の種よりも成長は遅いです。
これはやっぱり種を切ったために養分が不足したことが原因でしょうか?
成長段階のどの部分まで種の栄養は関係しますか?
種を切ることにより養分不足以外に影響はありますか?
詳しく説明されているホームページや本があれば合わせて教えてください。
ゆいさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。回答が遅くなってごめんなさい。面白いことを考えましたね。発芽した芽生えの成長に種子の栄養がどのように影響するかということを見たいのでしょうか。しかし、質問に書かれている実験の方法を読むと、ちょっと問題があると思います。まず、種子(タネという時は漢字で種と書かないように)は団子(ダンゴ)とちがって、切り分け方により、内容が全く違ったものになります。団子の場合は4つに切り分ければ、形と大きさの違いだけで内容には変わりはないのですが、種子の場合はそのようにはいかないのです。種子も小さな植物だと思ってみて下さい。そうすると切り方によって、全てが同じものを含んでいるとは限らないでしょう。そこで、最初に、種子とはどういう作りになっているかを学んでみましょう。種子は植物の種類によって形も大きさも異なります。くわしいことは、別のところで説明することにしますが(登録番号1717参照)、全ての種子は、種子をつつむ種皮(シュヒ)と、中に植物の赤ちゃんともいうべき胚(ハイ)が入っています。ここでは、アサガオの種子の場合を考えて、説明をつづけます。胚は、種子が発芽して根となる前のじょうたいのもの(幼根:ヨウコンといいます)、その上部にしょうらい茎の一部になる胚軸(ハイジク)、そして胚軸の先端に、成長とともに伸びてくる芽(メ)があります(これを幼芽:ヨウガといいます)。そして、芽のつけねの両横にハートがたの小さな葉がついています。この葉はふつうの葉とちがって、発芽後の芽生えがちゃんと大きくなるまでの栄養をほきゅうするのに必要です。種子の発芽とはこのような胚が種皮を突き破って大きく成長を始めることなのです。だから、胚が傷ついたりすると、発芽できなかったり、発芽してもちゃんと成長出来なかったりすることがあります。とくに、幼芽がとれたり、傷ついたりすると駄目です。
 さて、ゆいさんがアサガオの種子をいろいろな大きさに切った時、切り分けた部分はどんなじょうたいだったのでしょうか。発芽しなかったものは、きっと幼芽がふくまれていなかったのではないでしょうか。質問の内容だけでは、種子をどこにまいたのか、成長というのはどういうことからはんだんしているのかがはっきりしませんので、なんともいえませんが、一般的にいえることは、芽生えの成長はあるていど子葉の大きさにもえいきょうされますので、子葉が大きく切り取られるような種子の分け方をすると、芽生えの成長はおくれるでしょう。ただその間に幼芽が伸びて、ふつうの葉(本葉:ホンヨウといいます)ができてきて、本葉で栄養を合成(光合成といいます)できるようになると、そのごの成長は子葉には影響されませんので、植物はふつうにのびて行くと思います。子葉は、ただ栄養分だけでなく、植物の成長を助けるホルモン等も供給していますので、その影響もあるでしょう。
 このような実験には本当はアサガオの種子はあまり適当ではないと思います。アサガオの種子は種皮がとてもかたく、ただ水につけたり、土にまいただけでは、発芽に時間がかかります。アサガを栽培する人種皮に切り目をつけたりして水が中に入り易いように工夫しています(登録番号1374参照)。だから、切り分けた種子はそのままの種子より早く水を吸いますので、発芽は早いと思います。
 私は、このような実験の目的にはカボチャ(キュウリでもよい)のような、種子の中の胚の入り方が単純なものの方がいいと思います。まず、種子を取り除いて、胚の形しらべて見て下さい。そのうえで、どこをどのように切るかを決めれば、発芽に必要な、あるいは発芽後の成長に影響する部分というのが分かりやすいのではないでしょうか。

がんばって実験を続けて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-08-03
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