一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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空心菜の葉裏に謎の結晶がびっしり

質問者:   会社員   yae
登録番号2704   登録日:2012-07-30
趣味で水耕栽培をしています。
挿し芽で株を増やそうと、養液を入れた500mlのペットボトルに空心菜を差して育てていました。
東向きの窓枠の上にそれを並べていたのですが、そのまま溶液だけやり続けながら放置して、ずいぶんと大きくなったので、食べようと刈り取ったところ、葉裏に半透明の細かい結晶のようなものがびっしりついていてビックリしました。
水で洗っても落ちず、無理に剥がそうとすると葉が破れてしまうくらい、しっかりくっついています。
風通しの悪い暑い窓際で、ガラスに張り付くようにして育っていたのが、何か影響しているのでしょうか?
この結晶が何なのか、とても気になっています。写真があるので、ご連絡いただければお送りできます。結晶の形は丸くなく、角々しくてやや柱上に見えます。
よろしくお願いします。
yaeさま

ちゃんとしたお答えが出来なくて申し訳ございません。一緒にサイエンス・アドバイザーをやっている今関英雅先生を介して、野菜茶業研究所の永田雅靖先生に回答をお願い致しました。永田先生は色々な可能性を検討して下さり、その結果から一番高そうな可能性についてお教え下さいました。一件落着とは行きませんでしたが、ご参考にして下されば幸いです。


(回答)
ご返答が遅くなり申しわけありません。これまで、同様のお問い合わせの例が無かったため、実際に空心菜(Ipomoea aquatica、私たちは「ヨウサイ」と呼んでいます)を栽培して研究材料として使ったことのある研究者(複数)や、同属であるサツマイモ(Ipomoea batatas L.)の研究者(複数)にも聞いてみました。残念ながら完全に確定できる結果には至りませんでしたが、それらの情報を総合して、いくつかの可能性を検討してみました。

1.水耕液(養液)の成分が結晶化した可能性
これは、当該結晶状の物体が、水に溶けにくいということから可能性は低いと 思われます。

2.シュウ酸カルシウム等植物の代謝物
水に不溶性の結晶として、シュウ酸カルシウムが有名ですが、一般的にはもっ と細くて小さく、一般的には細胞中に見いだされるので、可能性は低いと思われます。

3.trichome等の植物器官(構造)
ヨウサイやサツマイモの研究者の中には、一般的な条件で栽培中の葉の裏に、ごくたまに、類似の突起が数個あるのを見たという方が複数いらっしゃいましたが、ここまでびっしりと存在するのは見たことがないとのお話です。一方、サツマイモの細胞培養を行った方からは、培養中にこのような「カルスもどき」と呼ばれる類似のものをたまに見たことがあるが、研究上の支障にならなかったため、詳細は検討したことがないとのことでした。Ipomoea aquaticaに関する論文(Manvar, IJPSR, 2011; Vol. 2(11): 2812-2815)の中には、Ipomoea aquatica がたくさんのtrichome(「毛じ」あるいは「毛状突起」)を持つと書いてあり、私の印象では、暑い窓際で水耕栽培という特殊な環境条件下で、この trichome が発達・顕在化したのではないかと推定しています。写真の中には、先の尖ったものや、カギ状に曲がったものがあり、それらしく見えます。trichomeであれば、水に溶けにくい、葉に付着しているという点は、説明できると思います。ただ、角々しているという点は異なるかもしれません。他にも、高温多湿条件で、不定根の可能性も考えられます(不定根は茎や葉脈から出る可能性が高い)。植物組織に詳しい方が顕微鏡下で検討されれば、どのケースにあたるか、同定できるかもしれません。

以上、確定はできませんでしたが、検討内容のご報告まで。

永田 雅靖(野菜茶業研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-08-17
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