一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

植物に糖分利用

質問者:   会社員   キム
登録番号2705   登録日:2012-07-31
植物の実生小苗を 早く開花サイズにしたり、室内栽培での日光不足を補ったり、夏バテなど弱った株や、輸入などで痩せた株の回復などに効果が有るのでしょうか?直接砂糖など鉢い蒔いても効果が得られるか。あと利用できる糖分の種類なども知りたいです。水中などの水草にも利用できるか知りたいです。又散布できる時期出来ない時期もありますか?
キムさん

ご質問ありがとうございました。
この質問には京都大学で植物栄養に関して研究をされている間藤先生が回答文をご用意下さいました。ご参考になさって下さい。



(間藤先生からの回答)

植物は光合成を行って糖を合成しますので、外から与えた糖が、光合成で作られる糖と同じような効果を持つか?ということですね。
植物の栽培されている条件によって、効く場合もあれば、また、害になる場合もある、というのがお答えです。
植物は土壌や水耕で栽培されていますが、いずれも有菌状態といって微生物も自由に生育できる環境です。このような植物に糖分(砂糖やぶどう糖)を与えると、まずは微生物がそれを餌にして増殖しますので、水耕液が濁ったり、土壌表面にカビが生えたりして、植物はこの糖をなかなか利用することができませんし、微生物が増殖して植物の害になることの方が多いです。
 
しかし、表面を殺菌した種子を、殺菌した培養液で栽培する無菌植物では、ご指摘のように、培養液に与えた糖分が光合成の代わりをして、植物を生育させることができ、実験室ではわりと普通に行われています。これは糖を横取りする微生物がいないので可能になるわけですが、その場合でもガラクトースという糖はグルコース(ブドウ糖、植物の基本的な栄養になる)の代謝を邪魔して生長を阻害することが知られています。
 
農家の温室で栽培されているトマトの場合では、雨の日が続くと温室内の二酸化炭素濃度を高めて光合成不足を補う、ということが普通に行われます。しかし、やはり糖分を直接与えて生長を促進することはできません。もしお商売で輸入植物を扱うとかであれば、温室で二酸化炭素濃度を高めて栽培し元気を回復させる、ということもできるでしょう。

切り花を長持ちさせる薬剤というのが市販されています。こうした薬剤は複数の成分でできていますが、その成分のひとつがクエン酸です。クエン酸は植物が糖を利用するときにできる中間物質で、有機酸と総称される物質のひとつですが、ある濃度以上なら微生物の活動を抑える効果もあります。つまりクエン酸を与えると、微生物の増殖を抑え、一部は植物にも吸収され糖に代わる機能を果たしていると推定されます。しかし土壌で栽培されている植物で、外から与えたクエン酸がどの程度、糖の代わりをできるか?は科学的には検討されていないのではないかと思います。

間藤 徹(京都大学大学院農学研究科・応用生命科学専攻・植物栄養学研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-08-07
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内