質問者:
会社員
亀さん
登録番号2716
登録日:2012-08-07
花粉管発芽について質問させてください。花粉管の発芽と伸長
顕微鏡で培地上でのムラサキツユクサ、テッポウユリの
花粉管発芽と伸長について顕微鏡で観察しました。
実際の柱頭での花粉管発芽と伸長は下記の①〜③それぞれ場合
どのようになるのでしょうか
(植物によって違いがあり、一般的には言えないのかも知れませんが
代表例で結構です。)
①異種の花粉が柱頭に付着
培地上と同様に発芽、伸長まではするのでしょうか
②同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、配偶体型)
・遺伝子一致の場合
・遺伝子不一致の場合
③同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、胞子体型)
・遺伝子一致の場合
・遺伝子不一致の場合
以上 よろしく御願いします。
亀さん さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「花粉管の発芽と伸長」に関するご質問は、植物受粉、授精、胚発生を研究しておられる名古屋大学の東山哲也先生に回答をお願いしました。
亀さん様
簡単で恐縮ですが、以下に解答致します。
①異種の花粉が柱頭に付着
培地上と同様に発芽、伸長まではするのでしょうか
一般に、近縁であればあるほど、花粉管は奥まで伸長します。言い換えますと、生殖のステージが、先まで進行します。私が研究に用いておりますトレニアを例にしますと、千葉大学の菊池真司先生のご研究(Breeding science 57, 117-122, 2007)によりますと、キンギョソウの花粉をトレニアに受粉しても花粉は柱頭でわずかに発芽して伸長がすぐに止まってしまう程度なのに対し、ミムルスの花粉をトレニアに受粉すると子房まで到達するそうです。
②同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、配偶体型)
・遺伝子一致の場合
遺伝子が一致(めしべと花粉のS遺伝子座のハプロタイプが一致)する場合、ペチュニアなどのよく調べられている植物では、花粉管はしばらく伸長したのち、花柱内で伸長を停止します。自他認識反応は、伸長中の花粉管内で起こります。
・遺伝子不一致の場合
めしべと花粉のS遺伝子座のハプロタイプが一致しない場合、その花粉管は問題なく伸長し、受精が成立します。
③同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、胞子体型)
・遺伝子一致の場合
めしべとおしべのS遺伝子座のハプロタイプが一部でも一致する場合、アブラナなどのよく調べられている植物では、そのおしべで作られた花粉は柱頭で吸水・発芽しないか、してもすぐに伸長を停止します。自他認識反応は、受粉反応で起こります。
・遺伝子不一致の場合
めしべとおしべのS遺伝子座のハプロタイプが全く一致しない場合、花粉管は問題なく伸長し、受精が成立します。しかし一部でも一致する場合、つまり花粉そのもののハプロタイプとめしべのハプロタイプが一致しない場合であっても、花粉のつくられたおしべ(葯)のハプロタイプに応じて、自己と判断され、受精は成立しません。
日本では、自家不和合性の研究が大変盛んです。専門家以外の人にもわかりやすく解説された文献が、多く存在すると思います。今回の回答には専門用語を多く含めてしまいましたが、逆にそれらをキーワードに、詳しく解説された文献を探してご参考頂ければと思います。
東山 哲也(名古屋大学大学院理学研究科)
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「花粉管の発芽と伸長」に関するご質問は、植物受粉、授精、胚発生を研究しておられる名古屋大学の東山哲也先生に回答をお願いしました。
亀さん様
簡単で恐縮ですが、以下に解答致します。
①異種の花粉が柱頭に付着
培地上と同様に発芽、伸長まではするのでしょうか
一般に、近縁であればあるほど、花粉管は奥まで伸長します。言い換えますと、生殖のステージが、先まで進行します。私が研究に用いておりますトレニアを例にしますと、千葉大学の菊池真司先生のご研究(Breeding science 57, 117-122, 2007)によりますと、キンギョソウの花粉をトレニアに受粉しても花粉は柱頭でわずかに発芽して伸長がすぐに止まってしまう程度なのに対し、ミムルスの花粉をトレニアに受粉すると子房まで到達するそうです。
②同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、配偶体型)
・遺伝子一致の場合
遺伝子が一致(めしべと花粉のS遺伝子座のハプロタイプが一致)する場合、ペチュニアなどのよく調べられている植物では、花粉管はしばらく伸長したのち、花柱内で伸長を停止します。自他認識反応は、伸長中の花粉管内で起こります。
・遺伝子不一致の場合
めしべと花粉のS遺伝子座のハプロタイプが一致しない場合、その花粉管は問題なく伸長し、受精が成立します。
③同種の花粉が柱頭に付着(自家不和合性、胞子体型)
・遺伝子一致の場合
めしべとおしべのS遺伝子座のハプロタイプが一部でも一致する場合、アブラナなどのよく調べられている植物では、そのおしべで作られた花粉は柱頭で吸水・発芽しないか、してもすぐに伸長を停止します。自他認識反応は、受粉反応で起こります。
・遺伝子不一致の場合
めしべとおしべのS遺伝子座のハプロタイプが全く一致しない場合、花粉管は問題なく伸長し、受精が成立します。しかし一部でも一致する場合、つまり花粉そのもののハプロタイプとめしべのハプロタイプが一致しない場合であっても、花粉のつくられたおしべ(葯)のハプロタイプに応じて、自己と判断され、受精は成立しません。
日本では、自家不和合性の研究が大変盛んです。専門家以外の人にもわかりやすく解説された文献が、多く存在すると思います。今回の回答には専門用語を多く含めてしまいましたが、逆にそれらをキーワードに、詳しく解説された文献を探してご参考頂ければと思います。
東山 哲也(名古屋大学大学院理学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-08-17
今関 英雅
回答日:2012-08-17