一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花の色を変えることについて

質問者:   中学生   RINA
登録番号2719   登録日:2012-08-13
私は夏休みの宿題で花の色を変える実験をしました。ペンのインクを溶かした水(赤 青 黒)各色ごとにペットボトルに入れて、花(水切りしたバラ)をさし、1時間ごとに経過を見ました。赤のバラは出来たのですが、青と黒は全く変化が見られませんでした。途中で、青のインクが入ったペットボトルと黒のインクが入ったペットボトルに少し水をいれて、もう一度バラを水切りしましたが、やはり変化は見られませんでした。翌朝みても変化はなかったのですが、バラは枯れていません。ちなみにペットボトルには茎の短いバラと茎の長いバラをいれています。なぜ、青と黒のバラが出来ないのでしょうか?また、もしバラの色を変えるなら、バラの色が変わりやすいインクの色を教えていただけないでしょうか?
RINAさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
花の切り枝に色のついた液を吸わせて花の色を変える実験は夏休み実験の定番のようですね。一番よく使われるのは、赤い食紅(変な言い方ですね。紅なら赤いに決まっていると思うでしょうが、食紅というと「食品の着色に使う色素」という意味に使われるので、「赤」や「青」の食紅と色を指定するのが普通です)で、いろいろな植物の切り枝をつけると茎や花が赤く染まることが観察されます。ところで、RINAさんは「ペンのインク」を使いましたね。問題はこの「ペンのインク」の正体が明らかでないことです。ペンのインクは、ペン先から滑らかに流れること、紙になじみやすいこと、インク瓶の中で沈殿物ができないこと、などといった幾つかの制約があって水溶性の色素の他にアラビアゴムなどの安定剤を加えたかなり複雑な組成をしているはずです。そのため色素がにかわやアラビアゴムのように粘着性の強い物質に包まれて微細な粒子状になっているため植物の導管に吸い込まれないのだと思います。特に黒の多くは微細な煤を使っている(墨がその代表です)ので吸収されません。それでは、赤インクではどうして染まったのでしょうか。たぶん、赤い食紅と似た色素を使い、安定剤も少なかったのかもしれません。
そこで、色インクでなく、食紅を使ってみたらどうでしょうか?しかし、食紅を使えばどんな色のバラでもできるかと言うとそうではなさそうです。食紅でも水に溶けたときに、完全な溶液になるもの、にかわ状になって溶けるものなどがあり、色素の性質によって違います。分子の大きさが小さく、完全な溶液になるものはたぶん植物に吸い上げられるはずですが、にかわ状に溶けた色素は吸い上げられません。でも試してみなければ分かりませんね。RINAさん、いろいろな色の食紅を使って実験してみる価値はありそうです。
水彩絵の具を使ったら、色が吸い上げられなかったという質問が前にありました(登録番号1348)。色をもつ物質の本体は実にさまざまな性質をもった物質ですので、植物はその中のごく一部しか取り込むことができないのです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-08-17
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