一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の酵素活性について

質問者:   一般   さんちゃん
登録番号2725   登録日:2012-08-16
いつもお世話になっております。
ご質問させていただきます。

植物の酵素は低温でも失活しないのでしょうか?
たとえば,クロレラの葉緑体を取り出して低温(0℃)下に置き,水とNADPに相当する酸化剤を加えて,光を照射すると酸素の発生は最適温度下に置いた時と同様に行われるものなのでしょうか?

酵素は低温で失活すると覚えていたのですが,植物の場合はこれがあてはまらないのでしょうか?

よろしくお願いします。
さんちゃん 様

ご質問をありがとうございました。先ずは、示された例についてお答えします。低温(0℃)下に置かれたクロレラの葉緑体が、最適温度下に置いた時と同様な速度で酸素を発生することはないでしょう。酸素発生に至る反応を触媒する酵素の活性は温度依存的ですので、低温(0℃)下での活性は非常に低いものと思われます(酵素反応の温度依存性)。しかし、低温下で酵素が活性を失う可能性も否定はできません。特に問題になるのは光の照射です。この場合、低温のために酵素が十分に機能しない条件下で過剰な光エネルギーが取りこまれることになるので、酵素の失活が起こることが予想されます(光合成の光失活)。

一般論として言えば、高温に曝されることによって酵素タンパク質が変性して活性能を失うことがあります(酵素の高温失活)。しかし、低温ではどちらかと言えば安定です。このため、生体外に取り出された酵素は、多くの場合、低温にして保存されます。ただし、凍結によって酵素が変性して失活することはあります。なお、酵素の種類によっては低温に置かれることによってタンパク質分子の集合状態に変化が生じるなどして活性を失うこともあります。事情は、大まかには、動物と植物で違いはありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-08-17
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