一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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赤い光と青い光

質問者:   大学生   yukun821
登録番号0274   登録日:2005-06-06
植物は赤い光と青い光を見分けて使い分けていると聞いたのですが赤い光と青い光でどのように反応が異なるのでしょうか?
yukan821 様

標記質問への回答は以下の通りです

生き物が光に反応するには、生き物の体の中に光を吸収する物質が必ず存在しなければなりません。その物質のことを光受容体と言います。たとえば、人間の目の中には、青と緑と赤の光をそれぞれ吸収する3種類のロドプシンという光受容体が存在します。そのおかげで、人間は様々な色を認識できるわけです。

ですから、「赤い光と青い光には反応にどのような違いがあるのでしょうか?」という問は、「赤い光と青い光を吸収する光受容体には、その働きにどのような違いがあるのか」という問にほかなりません。植物は人間より複雑で、3種類の光受容体を持っています。クリプトクロムとフォトトロピンは青い光を吸収し、フィトクロムは青から赤、遠赤色まで吸収します。ですから、青い光による反応は、この3種の光受容体が引き起こす反応の合計で、赤い光による反応はフィトクロム単独によると考えてよいでしょう。

植物は、たぶん光合成によってエネルギーを得ているからだと思うのですが、生育している環境の光の状態(強度、色、明暗の周期など)に非常に敏感です。
植物で観察されるあらゆる現象が光の状態によって影響を受けるといっても過言ではありません。そしてその影響を引き起こしている大本が上述した3種の光受容体です。フォトトロピンが引き起こす反応の代表は、屈光性と気孔の開閉です。クリプトクロムは茎の伸長や花芽の形成(花をいつ咲かせるか)を制御しています。フィトクロムは茎の伸長や花芽形成とともに、発芽も調節しています。

3種の受容体の中でフィトクロムだけが吸収することのできる赤から遠赤色の範囲の光には他の領域の光にはない特徴があります。光合成をおこなう植物には光合成色素であるクロロフィルが多量に含まれています。クロロフィルは赤い光は吸収しますが遠赤色は吸収しないので、植物を透過した光には遠赤色の光が多量に残ることになります。つまり、植物が浴びる光の中の赤色光と遠赤色光の量比は、植物の生育環境(太陽光を直接浴びているか、それとも周りの植物の陰になっているか)を反映しているのです。フィトクロムは赤色光と遠赤色光の量比を感じることができる仕組みをもっているので、日陰になっている場合は茎を伸長させ、植物の背を高くして陰から脱するように、日向になっている場合はそのまま葉を広げて光合成を効率よくおこなうようにさせています。
北海道大学
 山本 興太朗
回答日:2009-07-03
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