一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物は昆虫や鳥の行動をどうやって知るのか

質問者:   会社員   モノプリ
登録番号2748   登録日:2012-08-29
以前より不思議に思っていて、いろいろな書物やネットでも検索してみましたが、疑問の答えに行き着きませんでしたので、このサイトを使わせていただきました。
不思議に思っていることというのは、花木と昆虫、鳥などの関係についてです。花や木は虫や鳥たちを使って受粉したり、そうしてできた実を遠くに運んでもらったりしています。そのために虫や鳥たちに目立つような色の花や実をつけます。多分それは長い時間の経過の中で、この色をつければ虫や鳥たちが多く集まるということを触覚的に進化させてきた結果だと思います。不思議と思うのは次の段階のことです。植物は、虫や鳥によって食べられ、自分から離れて運ばれていった実の行方をどうやって知るのでしょうか。食べられる為の色や形の進化はわかるとしても、鳥がその後、食べた実を遠くまで運んでいってフンとして排出すること、それが種を増やす方法であることをどうやって知るのでしょうか。植物には光や熱など、自分に直に接する変化を感知する能力がありますが、いわゆる動物が持っている周囲状況を見るための「目」としての視覚機能は無いと思われます。植物にはまだ知られていない、自分の分身である「実」の行方を知る能力があるのでしょうか。
モノプリ様

ご質問承りました。

人間以外の生物は自分の未来を予測して行動することはできません。進化は突然変異によって引き起こされます。突然変異はいろいろな形の子孫を生み出すことができます。親は子供がどんな突然変異を持って生まれてくるか予想できません。鳥にとって少しおいしい実をつける親から、親と同じように少しおいしい実をつける子供と、突然変異でとてもおいしい実をつける子供が生まれたとします。とてもおいしい実をつける子供は偶然生まれたわけです。これらの子供たちが親になって実をつけると、とてもおいしい実の方が鳥が好みますので、この実は優先的に食べられ、散布されるようになります。これが自然選択です。何十代もこれが続くと、とてもおいしい実をつける個体のみになってしまい、少しおいしい実をつける個体はいなくなってしまいます。まったくの偶然でいろいろなことがおき、それが適しているときにのみ残っていくわけです。
JSPP広報委員長
長谷部 光泰
回答日:2012-09-12