一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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糖質分解について

質問者:   会社員   merry
登録番号2754   登録日:2012-09-11
くだものなど、夏の暑さが作用して甘くなりますよね(ぶどうなど)
寒暖でもメロンなどがそうだと。そのしくみがよくわかりません。
雨量にも関係しますか?くだものの性質によって、違うのでしょうか。
まとめると以下の感じでしょうか。糖質分解について簡単に教えてください。

① 寒暖差で糖度が分解される理由
② 乾燥で糖度が分解される理由
③ 暑さで糖度は分解される理由
merry さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
回答が遅れて申し訳ありません。
果物が甘くなる理由についてのお尋ねと理解しました。ご質問の中で「糖質分解」が甘くなる原因とお考えではないかと思われる表現がありますが、「糖質分解」は文字通り甘さの元である糖が分解するので、甘さは減ることになります。
果物は、果実で物質を貯める性質を持っています。果実とは、種子とそれを囲む組織が一体となった器官で、果物は種子を囲む組織が大きく、多量の水分を含み、かつ甘さ、酸味、色素、芳香などを持つ果実を指しています。ほとんどが木本(木)に生じます。果実が貯める物質は果物の特徴を示しますが、甘味はショ糖、ブドウ糖、果糖などが主なものです。糖類の蓄積は、果実が熟するにしたがって多くなりますので、よく熟した果実は、未熟の果実よりも甘さが強くなります。さて、物質の蓄積は葉の光合成でできた糖が輸送され、果実の中で特有の糖類に変換されますので、生理現象です。生理現象は環境の影響を強く受けますので、水分状態、温度変化などの影響を受けます。ブドウ、ミカンなどでは水分を制限すると糖度が上がることが知られ、実際の栽培で用いられています。供給される水分が少なくなると細胞は水分不足を感知してよりよく水分を吸収するような働きをします。その一つが細胞内に糖類を蓄積することです。細胞内に糖類が蓄積されると細胞は外部から水を吸収しやすくなります。しかし、水不足の状態ですから十分に水を吸収できませんから糖類は希釈されませんので糖度が上がる、という仕組みです。雨量は水分供給に直接関係しますから、果物の生育全般に大きく影響します。
温度変化も影響をします。特に昼夜温度の差は強く働き、夜温が低いほうが糖度は上がる傾向にあります。夏の終わりから初秋にかけて昼夜温の差は大きくなりますので果物にとっては都合のよい時期です。その主な理由は昼間にせっせと貯めこんだ糖類は呼吸で常に消費されるからです。呼吸は夜も昼も行いますが、糖を作る光合成は昼間だけです。呼吸は温度が高ければ盛んですから、夜に温度が低くなれば呼吸も低く、それだけ貯めこんだ糖の消費が少なくなるからです。
糖類蓄積の強さ、呼吸の大きさ、水分ストレスを受ける度合いなど果実の糖度に影響する反応は、果物の種類によって違いますのでミカンの場合、ブドウの場合、メロンの場合などなど個々については大きく違ってきます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-09-27
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