植物Q&A

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アサガオは、同じ蔓でも葉の形が違うのはなぜですか

質問者:   大学生   えっちゃん
登録番号2759   登録日:2012-09-18
 うちの庭には毎年朝顔が咲きます。毎年種が落ちて、それが勝手に翌年生えてきます。
そのアサガオを見て、いつも疑問に思うことがあります。同じ種類の朝顔のはずですが、生えている場所によって葉の形が異なります。
また、同じ蔓から出ている葉なのに、側方裂片は左右に一つずつのものがあったり、右だけ二つ出ていたり、左右ともに二つ出ていたり・・・。裂片の長さも切れ込みの深さもほんとに色々で、これらの形を決める因子とは、何なのでしょうか?もし葉の形が遺伝子によって決まっているのなら、同じ蔓からは同じ形の葉が出るはずです。
この朝顔の側方裂片は、環境因子によって決まるのでしょうか??
アサガオの葉以外にも、クズの葉(蔓性)も同じ蔓でも形が違う葉がついてることがあります(アサガオの葉の側方裂片程の違いではありませんが)。
これらの葉の形を決定している因子はなんなのでしょうか。
教えてください。よろしくお願いします。
えっちゃん様
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を葉の形についての研究をなさっておられる東京大学の塚谷裕一先生にお願い致しました所、丁寧な回答をお寄せ下さいました。ご参考になると思います。なお、塚谷先生の以前のカクレミノ(タカノツメ?)についての質問に対する回答も是非読んで下さい。


【塚谷先生のご回答】
えっちゃんさん

 ご質問ありがとうございます。

 それは環境因子というよりは、生理的な要因によるぶれですね。

 「もし葉の形が遺伝子によって決まっているのなら、同じ蔓からは同じ形の葉が出るはず」ということですが、そうでもありません。夏になるとよくみな経験するように、肌色は遺伝子によって決まっていますが、腕の左右を見比べると、必ずしも同一の肌色ではなく、たとえば手首の、時計のバンドで隠れる部分は色が薄いままです。また具合が悪いときには、血の気が引いて肌色が薄く青みを帯びて見えますし、重症の黄疸症状が始まると、黄色くなってきてしまいます。しかし肌色は確実に遺伝子によって決まっています。メラニン合成能が少ない人は全体にそうでない人に比べて色が薄く、合成能が強い人は逆に全体に濃いものです。かといって、日本人は黄色人種ですが、山吹色とかオレンジ色とかいったような鮮明な黄色の肌色になることは、いくらいろいろな環境を変えても不可能です。

 つまり遺伝子は、肌色を一義的に決めているのではなく、ある許容範囲を決めているわけです。その許容範囲のうちのどれを採るかは、外部の環境要因と体内の生理的要因とが選択するわけですね。

 葉の形も同じです。朝顔には、芋葉といって、裂片を全く作らない変異体があります(近縁種でやはり園芸でよく使われるマルバアサガオと同じ形です。マルバアサガオも、全く裂片を作りませんね)。逆に蜻蛉葉といって、裂片が左右二つずつできる変異体もあります(その左右の裂片を蜻蛉の羽に見立てているわけです)。これらはいずれも単一の遺伝子の変異です。こうした変異体の存在で明らかなように、裂片の有無やその数は、遺伝子によって制御されています。

 観察された裂片の数のばらつきは、上記のような、裂片の数を制御する遺伝子(たくさんあると想像されます)の働きが、生理的要因で強まったり弱まったりするためでしょう。同じようなことは、特にヤマグワでよく見られますから、今度、機会があれば観察してみてください。

 なおこうした葉の形の変化は、実は、植物の老熟度によってももたらされることがあります。幼弱か老成かというと、それこそ遺伝子ではなくて環境とか物理的時間とかで決まるような印象をもたれがちですが、植物では、その老熟度を制御する遺伝子もだいぶよくわかってきています。その遺伝子がどれくらい強く発言しているかによって、どのくらい大人びた姿になるかが決まるのです。「みんなのひろば」でも、「カクレミノ」についての質問に対して回答したことがあるので、参照してみてください。

塚谷 裕一(東京大学大学院・理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-10-05