質問者:
一般
Galapamath
登録番号2773
登録日:2012-10-18
登録番号みんなのひろば
生食されるデンプン その2
2770「生食されるデンプン」にご回答いただきありがとうございました。
追加の質問をさせていただきます。
先般疑問点を絞ってお尋ねしたつもりでいたところ、背景等の説明が足りていなかったかもしれません。
長文ながら、以下に若干記させていただきます。
[質問するに至った背景]
(1) とろろ(ヤマノイモ類を生ですりおろした物)は消化に良い
との記述が広く見受けられる
(2) (1)の「説明」として主に
(2-a) アミラーゼを含んでいる
が引き合いに出され、
ネットでは(ウィキペディア等)
(2-b) デンプンが「アルファ化」している
との記述も散見される
また
(2-c) ヤマノイモ類の細胞壁は比較的脆弱である
との報告もある
[確定的であると思われる知見]
(i) アミラーゼのデンプンに対する作用は、両者の組み合わせにより著しく異なる
(ii) 既知のアミラーゼの多くは、生デンプン(デンプン粒)に対する作用が弱い
(iii) 生デンプンは、糊化デンプンに比べて、アミラーゼの作用をはるかに受けにくい
(iv) ヤマノイモ類やバナナのデンプン粒は、馬鈴薯のそれに次ぐ程度にアミラーゼの作用を受けにくい
[背景事項に対する現時点での私の認識]
(1) 疑わしい
(2-a) 事実であるが、効果の度合いは疑わしい
(2-b) かなり疑わしい
(2-c) 事実であるが、消化性との関連は不明
[質問]
(Q1) (1)について、肯定的または否定的なデータはありますか?
特に、ヤマノイモ類のアミラーゼについて、自身のデンプン粒や麦飯・米飯等に対する作用
前回「ヤマイモについては個別のデータがありません」とのご回答をいただいたのですが、
中心的な疑問点でもあり、改めて提示させていただきました
(Q2) 糊化デンプンを貯蔵している植物はありますか?
(Q3) デンプンが生食される植物に何らかの特性はありますか?
上記以外にも、難消化性デンプンの効果等にも興味を持っています。
直接的なご回答でなくても、示唆なりいただければ幸いに存じます。
追加の質問をさせていただきます。
先般疑問点を絞ってお尋ねしたつもりでいたところ、背景等の説明が足りていなかったかもしれません。
長文ながら、以下に若干記させていただきます。
[質問するに至った背景]
(1) とろろ(ヤマノイモ類を生ですりおろした物)は消化に良い
との記述が広く見受けられる
(2) (1)の「説明」として主に
(2-a) アミラーゼを含んでいる
が引き合いに出され、
ネットでは(ウィキペディア等)
(2-b) デンプンが「アルファ化」している
との記述も散見される
また
(2-c) ヤマノイモ類の細胞壁は比較的脆弱である
との報告もある
[確定的であると思われる知見]
(i) アミラーゼのデンプンに対する作用は、両者の組み合わせにより著しく異なる
(ii) 既知のアミラーゼの多くは、生デンプン(デンプン粒)に対する作用が弱い
(iii) 生デンプンは、糊化デンプンに比べて、アミラーゼの作用をはるかに受けにくい
(iv) ヤマノイモ類やバナナのデンプン粒は、馬鈴薯のそれに次ぐ程度にアミラーゼの作用を受けにくい
[背景事項に対する現時点での私の認識]
(1) 疑わしい
(2-a) 事実であるが、効果の度合いは疑わしい
(2-b) かなり疑わしい
(2-c) 事実であるが、消化性との関連は不明
[質問]
(Q1) (1)について、肯定的または否定的なデータはありますか?
特に、ヤマノイモ類のアミラーゼについて、自身のデンプン粒や麦飯・米飯等に対する作用
前回「ヤマイモについては個別のデータがありません」とのご回答をいただいたのですが、
中心的な疑問点でもあり、改めて提示させていただきました
(Q2) 糊化デンプンを貯蔵している植物はありますか?
(Q3) デンプンが生食される植物に何らかの特性はありますか?
上記以外にも、難消化性デンプンの効果等にも興味を持っています。
直接的なご回答でなくても、示唆なりいただければ幸いに存じます。
Galapamathさん:
みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
お知りになりたい内容が栄養論、食品論、消化理論などに基づく論説を植物科学的立場で説明することを求められているように思われます。私たちは植物科学的立場で生物現象を解釈することはできますが栄養論、食品論、消化理論などを説明する知識は十分ではないことをまずお断りしておきます。
(Q1) (1)について、肯定的または否定的なデータはありますか?
肯定的データがあります。
(1) とろろ(ヤマノイモ類を生ですりおろした物)は消化に良い。
栄養学的に総合的に判断した表現です。アミラーゼがある、食物繊維や酸性機能タンパク質などが大量に含まれる、などの点を取り上げただけでも「消化によい」と一般的に判断できるのではないでしょうか。ヤマノイモには大根とほぼ同じレベルのアミラーゼ活性があるとの報告はあります(弘前大学教育学部教科教育研究紀要第17号(1993年3月):4 9-57)。「消化によい」のはアミラーゼがあるだけではなく、摂取した食品の総合的消化過程に寄与するかどうかで判断されているはずです。
(Q2) 糊化デンプンを貯蔵している植物はありますか? ありません。
(2-b) デンプンが「アルファ化」している。
デンプンは化合物として単一の物質ではありません。ブドウ糖がアルファ1,4結合したもので、その重合度や枝分かれの頻度が大きく異なった重合体の総称です。重合度の大きいアミロースやアミロペクチンは多くの水素結合で分子同士ががっちりと束ねられた、結晶化状態になりますが、重合度の小さい分子では、水素結合による束ね方が緩く「生デンプン(β化)」の状態でもある程度酵素分解を受けます。デンプンを加熱すると水素結合が緩み、分子間に水が入り込んで「糊化(α化)」しますので、より酵素分解を受けやすく(消化されやすく)なるものです。したがってα化したデンプンは自然界にありません。「とろろは消化に良い」のは、とろろに含まれるデンプン自体が消化されやすい形(重合度の小さいでん粉)で含まれるだけではなく、一緒に摂取する麦飯の消化をも促進する機能性物質があるからと理解すべきです。
(Q3) デンプンが生食される植物に何らかの特性はありますか?
おそらく、ヤマノイモ属の塊茎が唯一の生食されるでん粉性食品でしょう。ヤマノイモでん粉の重合度分布、物性などを調べた文献を見つけることはできませんでしたが、多量の粘質物質があるため、それらに中にでん粉粒が分散してでん粉固有の固さを感じないからではないかと推定できます。食品、栄養、調理などの専門家にうかがってください。
みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
お知りになりたい内容が栄養論、食品論、消化理論などに基づく論説を植物科学的立場で説明することを求められているように思われます。私たちは植物科学的立場で生物現象を解釈することはできますが栄養論、食品論、消化理論などを説明する知識は十分ではないことをまずお断りしておきます。
(Q1) (1)について、肯定的または否定的なデータはありますか?
肯定的データがあります。
(1) とろろ(ヤマノイモ類を生ですりおろした物)は消化に良い。
栄養学的に総合的に判断した表現です。アミラーゼがある、食物繊維や酸性機能タンパク質などが大量に含まれる、などの点を取り上げただけでも「消化によい」と一般的に判断できるのではないでしょうか。ヤマノイモには大根とほぼ同じレベルのアミラーゼ活性があるとの報告はあります(弘前大学教育学部教科教育研究紀要第17号(1993年3月):4 9-57)。「消化によい」のはアミラーゼがあるだけではなく、摂取した食品の総合的消化過程に寄与するかどうかで判断されているはずです。
(Q2) 糊化デンプンを貯蔵している植物はありますか? ありません。
(2-b) デンプンが「アルファ化」している。
デンプンは化合物として単一の物質ではありません。ブドウ糖がアルファ1,4結合したもので、その重合度や枝分かれの頻度が大きく異なった重合体の総称です。重合度の大きいアミロースやアミロペクチンは多くの水素結合で分子同士ががっちりと束ねられた、結晶化状態になりますが、重合度の小さい分子では、水素結合による束ね方が緩く「生デンプン(β化)」の状態でもある程度酵素分解を受けます。デンプンを加熱すると水素結合が緩み、分子間に水が入り込んで「糊化(α化)」しますので、より酵素分解を受けやすく(消化されやすく)なるものです。したがってα化したデンプンは自然界にありません。「とろろは消化に良い」のは、とろろに含まれるデンプン自体が消化されやすい形(重合度の小さいでん粉)で含まれるだけではなく、一緒に摂取する麦飯の消化をも促進する機能性物質があるからと理解すべきです。
(Q3) デンプンが生食される植物に何らかの特性はありますか?
おそらく、ヤマノイモ属の塊茎が唯一の生食されるでん粉性食品でしょう。ヤマノイモでん粉の重合度分布、物性などを調べた文献を見つけることはできませんでしたが、多量の粘質物質があるため、それらに中にでん粉粒が分散してでん粉固有の固さを感じないからではないかと推定できます。食品、栄養、調理などの専門家にうかがってください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-10-19
今関 英雅
回答日:2012-10-19