一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ネギの葉について

質問者:   一般   はつねこ
登録番号2782   登録日:2012-11-05
ネギの生産者です。
ネギの葉について質問です。他の方からも葉について質問があったようですが、もう少し詳しく知りたいので教えてください。

ネギの葉は見えているほうが裏側で、中のほうが表側だということはわかりました。
葉身の部分だけみると、先端のほうにいけばいくほど葉は薄くなります。しかし、葉鞘のほうにいけばいくほど葉の内側に白い繊維のようなものがついて厚みを帯びてきて、全体的に厚くなります。
この白い繊維状のようなものはなんですか?名前はついているのですか?
葉肉組織とか、葉の表面についている毛じのようなものですか?

なんとなくですが、この白い繊維状のものが全体的に厚くついているネギほど病気に弱いまたは病気にかかっている率が高いような気がします。
気になるのでわかりましたら教えていただけませんでしょうか?

また、襟首から下の葉と葉の間は通常のネギだと1cm程度の間隔があります。
ただ、今年はその葉と葉の間がほとんどなく、ギュッと詰まった感じで、葉が上に伸びず、横に広がって扇状になるようなネギが多かったです。
このようなネギは皮がむきにくくて扱いにくいです。
なぜこのように葉と葉の間が伸びないようなネギができるのでしょうか?
このようなネギを作らないようにするにはどうすればよいのでしょうか?

うまく説明できたかどうか不安ですが、ご回答の程よろしくお願いいたします。
はつねこ様

 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。生産の現場には不思議が満ちあふれているのですね。ご質問の内容を興味深く拝見させて頂きました。でも、なかなかの難問です。正しい回答が出来るかどうか自信がありませんが、連日ネギを食べて頑張ってみました。
 さて、ネギを切って見ましょう。根元近くでは、中心にある一番若い黄色い葉(葉身)では中がしっかりと詰まっています。しかし、上の方に切り進んで行くと、二番目に若い葉になり、詰まり方がゆるくなり、三番目に若い緑色になった葉では中空になっています。中空になった部分を縦に裂いて見ますと、内側に白い物が見えます。ご質問の白い物はこれで、中空になった葉身の中心部が壊れて残った残骸です。毛じ(毛)ではなさそうです。もっと上に、葉鞘と葉身の境目(襟首)より上に行くと、この残骸は乾涸びて葉身の内側に細い糸状にへばりつくようになります。と云うことで、糸状の物は葉身の中心部の残骸で、名前はありません。さて、どうして葉身の中心部に穴があくのでしょう。葉身の外側の部分の生長に中心部の生長がついて行かないからです。葉身にへばりついている白い組織の残骸は、外側の組織の生長が早ければ早いほど薄くなりますが、遅ければいつまでも厚いままで残ることになります。これからは想像です。白いものが多く残っていることが、外側の組織の生長が悪いからだとすると、生長が悪い原因として病気が考えられないでしょうか。
 その次の,葉身の付き方が扇形になることについてのご質問はもう一段と難解です。唯一思い出したのは植物ホルモンの一種のブラシノステロイドが稲の葉で葉鞘と葉身の角度を大きくすると云う報告です。ブラシノステロイドが合成出来ないイネでは葉が立っています。もしこのような働きがネギでもあるのなら、ブラシノステロイドの合成が盛んになり葉身の並び方が扇形になるのではないかと考え、ブラシノステロイドの専門家にネギにブラシノステロイドを処理したらどうなるのかを聞いたのですが、答えは貰えませんでした。もし、ネギでも葉身の並び方がブラシノステロイドで扇形になるのだとしたら、ブラシノステロイド合成がウイルス感染などのストレスにより盛んになることから、扇形の葉身の並び方がストレスによるものとの仮説が立てられそうですが、このことと、葉と葉の間の詰まることとの関係は全く分かりません。なけなしの知識を総動員しましたが、こんな回答しか作れませんでした。すみません。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-11-28