質問者:
高校生
田中
登録番号2788
登録日:2012-11-20
高校の授業で植物の組織について勉強をしました。みんなのひろば
高等植物の形成層について
高等植物(双子葉類)の場合は茎に形成層があり、肥大成長をしている。と先生が言っていました。しかし、葉の構造をみると、維管束には形成層がなくなっていました。不思議に思い、先生に聞いてみたところ、「ツバキなどには葉にも形成層がある。すべてが当てはまるわけではない。」と教えてくれました。
その時は、理解をしたつもりでいたのですが、よくよく考えたら「茎に形成層があるのに、葉には形成層がないものがある」ということ?と思いました。
①葉には形成層を持たないが、茎には形成層をもつ植物が一般的なのか。
②そのような植物が多いのであれば、茎にあった形成層はどこに行ってしまったのか??どこからなくなってしまうのか??
さらに、根の構造も勉強したのですが、根から茎への維管束の形が変わることを知りました。
③根では師部の周りにしか形成層が存在しませんでしたが、これはどうしてですか。
④根では形成層が師部1箇所に1つありますが、茎では1つの大きな輪になっています。この根と茎の間は形成層はどのようになっているのでしょうか??
わからないことだらけですが、教えてほしいです。
面白そうなので、自分でも形成層の観察をしてみたいのですが、
⑤観察に適している植物は何かありますか?
⑥染色した方が観察はしやすいですか?
教えてください。お願いします。
田中様
長らくお待ちいただきありがとうございました。ご質問承りました。植物体の中での形成層の出来方や多様性はとっても面白いです。図が無いとわかりにくいかもしれません。図書館などに下記の本があったらぜひ参照してください。「現代生物学大系7a2高等植物A2(中山書店)」
> (1)葉には形成層を持たないが、茎には形成層をもつ植物が一般的なのか。
先生がおっしゃるように形成層のある葉と無い葉があります。同じ葉の中でも太い葉脈には形成層ができるけれども細い葉脈にはできないことが多いです。
> (2)そのような植物が多いのであれば、茎にあった形成層はどこに行ってしまったのか??どこからなくなってしまうのか??
葉ができるときに葉原基(若い葉)の中に茎の維管束と連続的に維管束の元になる組織(前形成層)が形成されます。葉が成長するにつれ、前形成層から原生木部と原生師部が形成されます。そして、その後で、原生木部と原生師部の間の組織が維管束形成層となり分裂をして、二次木部と二次師部を形成します。この出来方は茎の維管束も同じです。茎の場合は、維管束形成層ができて二次木部や二次師部を作るようになります(植物によっては作らないものも多いです)。しかし、葉の場合は、維管束形成層ができる前で成長が止まったり、維管束形成層ができただけで二次木部や二次師部ができる前に成長が止まってしまうのです。
> (3)根では師部の周りにしか形成層が存在しませんでしたが、これはどうしてですか。
最近、東京大学の福田裕穂先生たちの研究から(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2008/22.html)、師管から出る物質によって維管束形成層の細胞(維管束幹細胞)が木部になることを抑制し、師部になることを促進することがわかってきました。茎では、この物質の届かない形成層にある細胞が木部に分化します。一方、根でどのような仕組みで木部と師部ができているかはまだわかっていません。ここでは、茎の例から類推してみましょう。根の先端に近い部分では、師部の内側に形成層ができるだけで、形成層の内側に木部ができません。根の茎に近い方では、少しだけ木部ができます。このことから、根の先端部分では、師部形成を促進する物質(木部形成を抑制する物質)が形成層全体に広がっていて、茎に近づくにつれ、その物質が届かない部分ができてくる(茎が太って維管束形成層の細胞数が増えることとも関連するかもしれません)からなのかもしれません。
> (4)根では形成層が師部1箇所に1つありますが、茎では1つの大きな輪になっています。この根と茎の間は形成層はどのようになっているのでしょうか??
(3)に関連しますが、序所につながっていきます。「現代生物学大系7a2高等植物A2(中山書店)」の図17がわかりやすいので参照してみてください。
> (5)観察に適している植物は何かありますか?
> (6)染色した方が観察はしやすいですか?
「維管束」「切片」などのキーワードでネット検索するといくつかわかりやすいサイトが出てきますのでぜひ自分で調べてみて下さい。たとえば、http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/jikken/toshu.htmlなどが参考になると思います。
長らくお待ちいただきありがとうございました。ご質問承りました。植物体の中での形成層の出来方や多様性はとっても面白いです。図が無いとわかりにくいかもしれません。図書館などに下記の本があったらぜひ参照してください。「現代生物学大系7a2高等植物A2(中山書店)」
> (1)葉には形成層を持たないが、茎には形成層をもつ植物が一般的なのか。
先生がおっしゃるように形成層のある葉と無い葉があります。同じ葉の中でも太い葉脈には形成層ができるけれども細い葉脈にはできないことが多いです。
> (2)そのような植物が多いのであれば、茎にあった形成層はどこに行ってしまったのか??どこからなくなってしまうのか??
葉ができるときに葉原基(若い葉)の中に茎の維管束と連続的に維管束の元になる組織(前形成層)が形成されます。葉が成長するにつれ、前形成層から原生木部と原生師部が形成されます。そして、その後で、原生木部と原生師部の間の組織が維管束形成層となり分裂をして、二次木部と二次師部を形成します。この出来方は茎の維管束も同じです。茎の場合は、維管束形成層ができて二次木部や二次師部を作るようになります(植物によっては作らないものも多いです)。しかし、葉の場合は、維管束形成層ができる前で成長が止まったり、維管束形成層ができただけで二次木部や二次師部ができる前に成長が止まってしまうのです。
> (3)根では師部の周りにしか形成層が存在しませんでしたが、これはどうしてですか。
最近、東京大学の福田裕穂先生たちの研究から(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2008/22.html)、師管から出る物質によって維管束形成層の細胞(維管束幹細胞)が木部になることを抑制し、師部になることを促進することがわかってきました。茎では、この物質の届かない形成層にある細胞が木部に分化します。一方、根でどのような仕組みで木部と師部ができているかはまだわかっていません。ここでは、茎の例から類推してみましょう。根の先端に近い部分では、師部の内側に形成層ができるだけで、形成層の内側に木部ができません。根の茎に近い方では、少しだけ木部ができます。このことから、根の先端部分では、師部形成を促進する物質(木部形成を抑制する物質)が形成層全体に広がっていて、茎に近づくにつれ、その物質が届かない部分ができてくる(茎が太って維管束形成層の細胞数が増えることとも関連するかもしれません)からなのかもしれません。
> (4)根では形成層が師部1箇所に1つありますが、茎では1つの大きな輪になっています。この根と茎の間は形成層はどのようになっているのでしょうか??
(3)に関連しますが、序所につながっていきます。「現代生物学大系7a2高等植物A2(中山書店)」の図17がわかりやすいので参照してみてください。
> (5)観察に適している植物は何かありますか?
> (6)染色した方が観察はしやすいですか?
「維管束」「切片」などのキーワードでネット検索するといくつかわかりやすいサイトが出てきますのでぜひ自分で調べてみて下さい。たとえば、http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/jikken/toshu.htmlなどが参考になると思います。
JSPP広報委員長
長谷部 光泰
回答日:2012-12-21
長谷部 光泰
回答日:2012-12-21