一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ジャガイモの茎のヨウ素デンプン反応について

質問者:   その他   市村 毅
登録番号0279   登録日:2005-06-20
小学校の理科の実験についての質問です。

先日,ジャガイモの葉のデンプンと塊茎のデンプンに興味をもった児童が,その間にある茎にデンプンはあるのか?という疑問をもちました。
その児童は,デンプンが通る茎の断面にはデンプンがあるという予想をしました。

ある曇りの日の午後,鉛筆よりやや細い茎の断面で,ヨウ素デンプン反応を調べたところ,その茎のやや内側に丸く反応がでました。
デンプンがあったという結果ですが,ジャガイモの維管束のつくりから解説をいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
市村 毅様
遅くなりましたが、ご質問の件について回答いたします。
回答は大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻の寺島一郎先生にお願いしました。

ジャガイモにはデンプンが蓄積されます。葉の光合成によってできたショ糖(スクロース)が茎の篩管を通って地下まで運ばれ,これを原料としてイモでデンプンが合成されるためです。ですから,茎の中をデンプンが移動するわけではありません。
 篩管について一言:教科書には師管とあります。しかし,この名前は,篩管を形成する細胞である「篩管要素」同士の継ぎ目が篩(ふるい)状の網目に見えるためについたものです。したがって,篩管が正しいのです。

では鉛筆よりもやや細い茎のやや内側に丸く反応したデンプンは何か。3つ可能性が考えられます。

1.ジャガイモの茎は緑色に見えます。一番外側の表皮細胞には普通は葉緑体がありません。次の層からの皮層とよばれる組織の細胞には葉緑体があり,光合成をしています。曇りの日でも午後になるとデンプンが蓄積すると思います。
2.若い茎には,皮層の最内層にデンプン鞘とよばれる組織があります。維管束が規則正しくならんでいる外側のあたりです。デンプンはデンプン鞘の細胞の中の色素体に存在します。
3.この太さになると,維管束の間にも維管束管形成層がつくられており,さかんに細胞分裂が行われます。盛んに分裂する形成層細胞の周りにデンプンが存在することも多いようです。

顕微鏡写真あるいは拡大した写真を撮られたようでしたら,お送りくだされば確認しますが,規則正しく並んだ維管束のやや外側にリング状に見えるようでしたら,2でしょう。
 寺島 一郎(大阪大学大学院理学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
 勝見 允行
回答日:2009-07-03