一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イチョウの葉が一斉に舞い落ちる理由

質問者:   一般   彩木瑠璃
登録番号2791   登録日:2012-11-28
先日、樹齢800年の大イチョウを見に行きました。風のない暖かい日のことです。木をじっとながめていると、不思議なことに気づきました。時間の間隔は一定ではないとは思いますが、ある時間が経つと、イチョウの葉が、一斉に、何百枚、いや、何千枚と、まるで申し合わせでもしたように、一斉に舞い落ちるのです。風が吹いているわけではないので、それらの大量の葉は、ほぼ垂直に散っていきます。その時間の間隔は、5分もなかったとは思いますが、そうやって、一斉に散っては、静まり、また、散っては静まりを繰り返していました。その光景たるや、黄金色の雪が舞っては止み、舞っては止み、という感じで、とても風情がありました。どうしてこのような現象が起きるのでしょうか?
彩木瑠璃 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。今年はいつまでも暖かくて紅葉の始まりも遅かったですね。でもさすが師走も半ばになるとイチョウもそろそろ散り終わることでしょう。イチョウの落葉が一斉と言っていい程短時間に一緒起こることは良く知られた事実です。早いと2時間位で樹が裸になることもあるようですが、普通は1日でほぼ全葉が落ちてしまいます。だから、英語でもそのような日を”Ginkgo Day”と呼ぶ人もいます。なぜこういうことが起きるのか。イチョウだけに特別な仕組みがあるのだろうかと一寸不思議にも感じますが、そういう研究を報告した例はないようです。しかし、考えてみると、特に不思議ではないのかもしれません。落葉の仕組みは本コーナーに登録されている質問/回答(例えば、登録番号2442、2622,その他)を検索して学んで下さい。簡単に言うと、落葉は葉柄の基部に離層という組織が形成されて、幹から葉への水分や養分の流通が遮断されて葉(葉身)が枯死にいたり、そして、離層の部分が機械的に弱くなって、葉が脱落するという過程で起こります。したがって、落葉が何時起きるかは、離層が何時出来るかと関係があります。もし夫々の葉で離層の形成される時期がばらばらなら、落葉の時期もばらばらでしょう。だから、多分イチョウでは全ての葉に離層の形成がほぼ一斉に起きるのだと推定されます。なぜ一斉に離層が形成されるのかは分かりません。イチョウでは葉芽がほぼ同時に形成されて、揃って成長しているのだとすれば、夫々の葉の寿命も同じでしょうから、離層の形成が同時に起きても不思議はないでしょう。ただし、これは私の想像ですから、確認した訳ではありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2013-05-31
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