一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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太陽・紫外線における植物の病害抵抗性について

質問者:   会社員   ナカシマヤスシ
登録番号2796   登録日:2012-12-08
初めて質問をさせていただきます。

現在、野菜苗を生産している会社にて接木苗の生産部署で勤務しています。特にウリ科接木は断根挿し接ぎ法を用いています。

弊社の品質基準として、“悪天候の翌日は接木を行わない”で現在徹底しています(基本的にウリ科接木)。これは経験的なことですが、梅雨時や冬至の前後で特に日照時間や日照量が少ない時期に注文をいただき、接木を行う際は前日の天気が晴れと雨及び雲の厚い時では接木後の養生〜順化〜育苗に明らかな違いが見られることがあります。具体的には前日が晴れの日と比べて発根時期の遅れやその後の不定根の広がりの悪さ、株の広がりが悪い、病気にかかりやすい、下手な接木だと接ぎ目が腐る等の症状が比較的多いです。

科学的な実証はこれまで行っていませんが、やはり光合成における糖度の増え方に違いがあるからでしょうか? また、同じような曇りでも夏至前後と冬至前後では光および紫外線の強さに違いがあるので(無論、育苗温度も異なります)育苗〜接木までの日数に違いがあるのはもちろん、接木〜挿し木〜養生〜順化の過程においても発根までの時間や病気の抵抗性が異なってきます。

上記を踏まえて、日照量・時間・それにともなう紫外線の量や強さは病害抵抗性に密接な関係はあるのでしょうか? 
ナカシマヤスシ さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
実際の農業現場での経験的知見は多くみられる現象ですが、そのほとんどは科学的な裏付けがなされておりません。それは経験的知見が栽培者、栽培地、地域、気候などによって必ずしも同じでなく、普遍性がはっきりしていないことが理由となっています。ご質問の「前提」とされている知見もその普遍性がはっきりしないため科学的解析ができない(できていない)ものと思われ、このコーナーでお答えできる範囲の「前提」とすることはできないことをお断りしておきます。
しかしタイトルにある「太陽・紫外線における植物の病害抵抗性について」「紫外線の量や強さは病害抵抗性に密接な関係はあるのでしょうか?」とのご質問内容を一般的に捕えるといくつかの研究があります。植物に紫外線、主にUV-Bを数時間照射すると、植物が病害を受けた場合に起こる防御反応(たとえば、病原菌侵入や感染を妨げる反応に関与するたんぱく質の増加、それらの遺伝子の発現など)が起こることがタバコやシロイヌナズナといった実験植物で観察されています。これらの知見を受けて、ナス、トマト、キュウリ、イチゴなどに紫外線を照射すると、それぞれの病害菌(ナス灰色かび病、トマト葉かび病、キュウリうどんこ病、イチゴうどんこ病)に対する防除効果が示されています。蔬菜苗の接ぎ木に病害菌被害があれば、紫外線照射は効果があるかもしれませんが、接ぎ木過程への影響は慎重に調査研究する必要がありそうです。
なお、類似の質問がこのコーナーの登録番号0940にありますのでご参考になさってください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-12-18
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