質問者:
その他
稲田
登録番号0280
登録日:2005-06-21
初めまして。街中で、木のそばにある標識や金網が幹に埋まっているものをたまに見かけますが、それについて気になることがあって書き込ませて頂きました。みんなのひろば
木の異物(標識など)を取り込む性質について
「どういった種類の木に見られる性質なのでしょうか。
また、その仕組みや起こりやすい環境などあれば教えて下さい。」
上記の質問を質問サイト(教えてgoo)生物学のカテゴリにて質問していたのですが
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1435985
そちらでどういった種類の木に起るかというのは、木の年齢によるのだと教えて頂き
それとともに画像の参考URL(http://portal.nifty.com/koneta05/03/03/02/img/5.jpg http://www.toho-leo.co.jp/chikara/mirai.html)を教えて頂いたのですが、その画像(金属支柱の3つ目など)を見ても動物の首輪や纏足のように、締め付けられて埋まっていったりそこで成長が止まるわけではなく、逆にその周りが粘性の物質のように盛りあがり、障害物を巻き込むのがとても不思議に思えます。
木の内部でその部分はどのような状態になっているのか、なぜそうなるのか教えていただけたらと思い、書き込ませて頂きました。
よろしくお願いします。
稲田さま
ご質問有難うございました。
幹の中に金網の針金が埋まる現象はどんな樹木でも起きると思います。ご存知のように、木の皮(樹皮)を剥ぐと形成層というみずみずしい組織が現れますが、この形成層で細胞が作られ木は太くなります。金網などに捕まっていない場合、ほぼ、一様に太くなりますが、金網に捕まった場合、針金の所は太れず、その上下は太るので、針金が埋まることになります。これがもっとも単純な場合ですが、ご質問の内容は、こんな単純な場合ではなく、樹木が異物を完全に巻き込んでいるように見えるものを考えられているのだと思われます。近場でそのような例を捜してみたところ、箕面にコンクリ-ト製の手すりに接したスギの幹が手すりを取り巻いて膨らんでいるところを見つけました。樹皮があるので、異物と形成層が直接接することはありませんが、異物に押された刺激によって、押された部分とその周りの形成層の働が活発になり、細胞が異常に増殖したためと考えられます。篩管を流れる物質が蓄積したためとすると、異物に押された下の部分が膨らんでいることが説明出来ません。樹皮を剥ぐ(篩管を切除することになります)と剥いだ上が膨らみますが(植物ホルモンのオーキシンがたまったことが理由のひとつです)、剥いだ下は膨らみません。
次に接ぎ木の場合についてお話します。接ぎ木の場合、先端部分を取り除いた、台木と、根を含む基部を取り除いた接ぎ穂の切り口を合わせて固定しますが、切り口のところの形成層の働で細胞が増え、細胞の塊(カルスと呼びます)が出来、このカルスの中に維管束(道管や篩管)が分化し、台木と接ぎ穂は一緒になります。接ぎ木の技術の中に、寄せ接ぎというのがあります。2個体の植物の茎の側面をそいで、そいだ面を合わせて固定する方法です。この場合も、そいだ面に現れた形成層の働でカルスができ、維管束がつながり一緒になります。私は見ていないので確かではありませんが、万博でご覧になられたのは、この寄せ接ぎの技術を使って作ったのではないかと思います。
大きなスギの木が2本一緒になった、よくある夫婦杉の場合ですが、これは一緒になっているかどうかは、切ってみないと分かりません。ただ、押し合っているだけなのかも知れませんし、押し合った結果、形成層の働が活発になり、寄せ接ぎの場合と同じように一緒になったのかも知れません。
免疫については、最近のみんなの広場に質問がありましたので、参考にして下さい。
ご質問有難うございました。
幹の中に金網の針金が埋まる現象はどんな樹木でも起きると思います。ご存知のように、木の皮(樹皮)を剥ぐと形成層というみずみずしい組織が現れますが、この形成層で細胞が作られ木は太くなります。金網などに捕まっていない場合、ほぼ、一様に太くなりますが、金網に捕まった場合、針金の所は太れず、その上下は太るので、針金が埋まることになります。これがもっとも単純な場合ですが、ご質問の内容は、こんな単純な場合ではなく、樹木が異物を完全に巻き込んでいるように見えるものを考えられているのだと思われます。近場でそのような例を捜してみたところ、箕面にコンクリ-ト製の手すりに接したスギの幹が手すりを取り巻いて膨らんでいるところを見つけました。樹皮があるので、異物と形成層が直接接することはありませんが、異物に押された刺激によって、押された部分とその周りの形成層の働が活発になり、細胞が異常に増殖したためと考えられます。篩管を流れる物質が蓄積したためとすると、異物に押された下の部分が膨らんでいることが説明出来ません。樹皮を剥ぐ(篩管を切除することになります)と剥いだ上が膨らみますが(植物ホルモンのオーキシンがたまったことが理由のひとつです)、剥いだ下は膨らみません。
次に接ぎ木の場合についてお話します。接ぎ木の場合、先端部分を取り除いた、台木と、根を含む基部を取り除いた接ぎ穂の切り口を合わせて固定しますが、切り口のところの形成層の働で細胞が増え、細胞の塊(カルスと呼びます)が出来、このカルスの中に維管束(道管や篩管)が分化し、台木と接ぎ穂は一緒になります。接ぎ木の技術の中に、寄せ接ぎというのがあります。2個体の植物の茎の側面をそいで、そいだ面を合わせて固定する方法です。この場合も、そいだ面に現れた形成層の働でカルスができ、維管束がつながり一緒になります。私は見ていないので確かではありませんが、万博でご覧になられたのは、この寄せ接ぎの技術を使って作ったのではないかと思います。
大きなスギの木が2本一緒になった、よくある夫婦杉の場合ですが、これは一緒になっているかどうかは、切ってみないと分かりません。ただ、押し合っているだけなのかも知れませんし、押し合った結果、形成層の働が活発になり、寄せ接ぎの場合と同じように一緒になったのかも知れません。
免疫については、最近のみんなの広場に質問がありましたので、参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-07-03
柴岡 弘郎
回答日:2009-07-03