一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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窒素循環について

質問者:   教員   morn
登録番号2801   登録日:2012-12-14
窒素循環について授業をするにあたり,独学で学んだところ,幾つか疑問が生じましたので質問させていただきたいと思います。(質問1941も拝見しました。)

1.窒素固定菌により大気中の窒素がアンモニア態に固定され,植物やバクテリアが利用するという記述がありました。固定された窒素(アンモニア)を生物が体内に取り込むには,どのような機能が働いているのでしょうか?(浸透圧でしょうか)
2.グルタミン酸シンターゼ(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)という酵素が2-オキソグルタル酸と2分子のグルタミンから,グルタミン酸を合成するという記述がありましたが,1で質問したような,体内に取り込まれたアンモニアは,どのやって反応経路に到達するのでしょうか?運搬を行うたんぱく質が存在するのでしょうか?
morn さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問の答えは質問1941の回答にはっきり書かれているように思いますので、どの点がご質問の本質なのか確実に把握できていないかもしれません。同じような内容になるかもしれませんが、少しばかり違った視点からご説明します。ただし、共生窒素固定菌の種類によって根粒の具体的構造に違いはありますが、窒素の流れについては変わりありません。
根粒の中は、宿主植物根の皮層細胞が分裂した細胞の中に根粒菌バクテロイドがペリバクテロイド膜に包まれて詰まったバクテロイド組織があり、その近辺に宿主の維管束が発達しています。バクテロイドは窒素固定を活発に行いニトロゲナーゼによってガス状窒素を還元してアンモニアを生成します。生成されたアンモニアはペリバクテロイド膜、宿主細胞膜を通して宿主細胞に移され、直ちにグルタミン合成酵素の働きでグルタミンとなり、さらにグルタミン酸などのアミノ酸、あるいはアラントインなどのウレイド化合物となって維管束を介して他の部分に運ばれます。運ばれた先ではアミノ転移酵素などで別のアミノ酸になり生育の栄養として使われます。遊離のアンモニアは有毒ですので取り込まれた細胞で直ちに有機化され、遊離アンモニアの状態で細胞間をうろつくことはありません。
バクテロイドで生成されたアンモニアが植物側に渡されるのは、ペリバクテロイド膜にある排出に携わる輸送体と宿主細胞膜にある吸収輸送体によると考えられています。排出輸送体の実体はまだ明らかにされていませんが、植物細胞膜にあるアンモニア吸収輸送体はシロイヌナズナでは遺伝子も明らかにされており、類似の輸送体がマメ科根粒にもあることは十分考えられることです。
2のご質問の記載には誤解があるようです。質問1941にはっきり解説されていますように、植物ではグルタミン酸脱水素酵素(アンモニア + 2-オキソグルタル酸 → グルタミン酸)の働きはよく分かっていません。アンモニアの代謝には

1 アンモニア +グルタミン酸 → グルタミン (グルタミン合成酵素GS)
2 グルタミン +2-オキソグルタル酸 → 2xグルタミン酸 (グルタミン・オキソグルタル酸アミノ転移酵素GOGAT)。

の二つの反応が共役して、1分子のグルタミン酸が植物体で運ばれ代謝されます。GSの反応は触媒的回路となって連続的にアンモニアを有機化する働きをしています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-12-18
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