一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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柿の渋について

質問者:   教員   キーロン
登録番号2806   登録日:2012-12-21
柿の質問はいろいろな方からあるようですが、どうしてもわからないので教えてください。渋柿を袋に入れて、さらにその中に紙で包んだドライアイスのかけらを入れました。これで渋が数日で抜けますが、抜ける途中でいたずらして食べてみました。すると果実の中央付近はすでに甘くなっていましたが、外側の皮に近い部分はまだ渋がありました。なぜ中央付近から渋が抜けてくるのですか。ヘタと関係がありますか。考えられることを教えてください。
キーロン様

 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。いたずらもするもんですね。新しい発見がありました。甘柿に2種類あることから書かせて下さい。2種類とは、完全甘柿と不完全甘柿のことです。種子があっても無くても甘くなる、すなわち受精が上手く行っても、行かなくても甘くなるのが完全甘柿で、富有柿や次郎柿などです。一方、不完全甘柿とは受精が上手く行かなかったり、気温が低くて種子の発達が悪かったりすると渋いままですが、種子がちゃんと出来ると、種子の周りにゴマが出来て甘くなる柿です。なんとなく答えに近づいてきました。柿の渋いもとはタンニンでタンニンが可溶性だと渋く感じるのですが、不溶性だと渋く感じません。不完全甘柿では種子から出されるアセトアルデヒドと云う物質が可溶性のタンニンを不溶性にするので甘くなるのです。ドライアイスで渋抜きをなさっておられるそうですが、これは炭酸ガスを処理した事になります。炭酸ガスは種子のアセトアルデヒド生成を促して可溶性のタンニンを不溶性にして渋みを消しているので、効果は種子の側から現れることになり、キーロン様の経験なさったような事になるのです。ドライアイス法とアセトアルデヒド生成との関係については登録番号2545をご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-12-27