一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

枝垂れる樹木の育ち方

質問者:   一般   wabisuke
登録番号2814   登録日:2013-01-21
お世話になります。
シダレヤナギなどの枝垂れる樹木について質問を申し上げます。

過去の質問(登録番号0486など)を拝見して、枝垂れる植物においては「枝を引っ張りあげる“引っ張りあて材”」のような組織が発達しないために枝が下垂するということは理解いたしました。
ところが、街路樹のヤナギなどを観察すると幹の部分はまっすぐ上に伸び、先端部の枝のみが長く下垂しているように見受けられます。
このような植物では、生長の初期の段階では「引っ張りあて材」は発達しているのに、ある程度幹が伸びるとそれが発達しなくなるということなのでしょうか?
それともシダレヤナギは生育初期には下垂しないよう、人為的支柱のようなものを添えて栽培されているのでしょうか?

自分でも春になったら実験してみようと考えておりますが・・・
シダレヤナギの枝を挿した鉢を天地さかさまにして栽培すると、どのように育つと予想されるでしょうか?
はじめは重力に逆らう方向に伸び、ある程度幹が伸びると重力に従って枝を下垂させる?
それともはじめから重力に従って下に伸びる?
いずれでしょうか?
何とぞご教示くださるよう、お願いいたします。
wabisuke 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。本当に長い間お待たせしてしまってすみません。回答をお願いしていた先生からは結局返事がいただけなかったので、あらためて、京都大学生存圏研究所の馬場 啓一先生にお願いしましたところ、以下のような回答をいただきました。


[回答]

しだれ品種の成長初期についての質問ですが、我々が良く目にするしだれ品種の樹木に実生(種子から成長する)のものは無く、挿し木や接ぎ木で育てられます。従って成長初期は必ず人の手が加わっていると考えるのが妥当です。しだれの程度がきつい品種ではある程度の太さまで添え木をしないと地 面を這うものもありますが、しだれの程度が低い場合は添え木が無くても大丈夫なものもあります。しだれる理由については、引張あて材が形成されない(されにくい・弱いも含めて)こともありますが、伸長成長と肥大成長のアンバランスもあります。枝が伸びるばかりでそれを支える木部の直径を増やす方が追いつかない形態です。シダレヤナギの場合は引張あて材の形成も弱いですが、伸長と肥大のアンバランスも大きな原因となっていると考えられます。樹形形成に関わる成長様式についてですが、ヤナギのしだれ種において、同一年に出た枝は年々減り続けるが、均等に生き残るのではなく、付け根が上を向いている枝がより生き残 りやすいという研究例があります。こうして樹形が上へ上へと形成されるということです。

もう一つの質問、シダレヤナギの枝を挿した鉢を天地さかさまにして栽培すると、どのように育つと予想されるでしょうか?についてですが、土が落ちないように鉢を天地さかさまに栽培するのは難しそうですね。それはともかく、実際のシダレヤナギの木を見ると、斜めの親枝から真下に向かって出ている枝がけっこうあります。これと同じ形になるのではないかなと想像します。

以上

馬場 啓一(京都大学生存圏研究所)
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2013-07-08
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内