一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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針葉樹の落葉

質問者:   高校生   夜行列車
登録番号2816   登録日:2013-01-29
こんにちは
受験で生物を学んでいるものです

植物の葉の落葉について
落葉は葉で作られた同化産物が新しく葉を作ることよりも、葉をつけておくことにより消費される量の方が多くなるときに起こると学びました
では光合成を行う状況が悪くなりそうな冬季に北海道東北地方の松などの針葉樹が落葉しないのはどうしてですか?
冬季には光合成産物があまり作られず、落葉した方が良いのでは…と思いました
夜行列車 さん

受験生からのご質問とのこと、ありがとうございます。
冬季に植物が落葉するかどうかは、簡単には、(A)光合成による同化産物の蓄積と(B)蓄積する産物の呼吸などによる消費との間の収支によって決まると考えることができます。しかし、これ以外にも関係する重要な要因があります。それは、(C)蒸散作用による水分の損失です。
冬の季節には、低温度のために根からの水分吸収が衰えるので、蒸散作用による水分の損失が植物にとっては深刻な問題になります。落葉広葉樹の場合には、葉を落とすことで蒸散による水分の損失を防いでいますが、マツなどの針葉常緑樹の場合には、蒸散を抑えるための仕組みが備わっていることで、これに対応できているようです。その仕組みとしては、(1)外気に触れる表面積を出来るだけ減らせるように葉の形を針状にすること、(2)気孔を表皮のレベルから陥没した位置に配置し、気孔装置内の気流を緩和して過度な蒸散が防げるようにすること、(3)表皮のクチクラ層を発達させて体表からの蒸散を抑えるようにすることなどがあるようです。これらの仕組みによって水分の損失が抑えられるので、光合成の効率が低い期間にあっても緑葉を保っておく方が生存にとって有利に働いているものと思われます。
このコーナーには、関連したQ/A(例えば、登録番号1964)がありますので、そちらの方もご参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2013-02-04
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