質問者:
教員
田中 秀明
登録番号2850
登録日:2013-04-26
単子葉植物の光合成についてと葉の糖の検出方法を聞きたいと思います。みんなのひろば
単子葉植物の光合成と葉の糖の検出方法
①単子葉植物はどうして葉ででんぷんをすぐに糖の形のかえるのですか?何か都合がよいのか、葉のつくりからそうしているのか知りたいです。
また、逆に双子葉植物がどうしてでんぷんの姿で貯めているのか知りたいです。
②単子葉植物の葉の糖の検出方法を知りたいです。
実は以前ベネジクト液では検出できないことを聞きました。また、糖尿病などで使われる「テステープ」でも駄目なことは聞いたと思います。ぜひ、小学校の授業で単子葉植物も養分を作っていると捉えさせたいと思っています。その養分は糖であると捉えさせるためには試薬が必要です。ぜひ、単子葉植物の葉の糖を検出する方法とその試薬の購入方法を教えていただきたいと思います。
田中 秀明 様
ご質問をありがとうございます。
この質問に関連するQ&Aが本コーナーには多数掲載されておりますので、私の回答で至らぬところを、例えば登録番号1644、2239、0271、0400、0128、0075で補って下さい。
(1)葉緑体で営まれる光合成の過程で作られる有機物は、細胞質でショ糖の形に変換され、大量なエネルギー消費と炭素素材を必要とする生長中の組織や、次世代個体のための貯蔵組織に輸送される流れとなっております。この流れの中で、ショ糖の合成が葉の輸送能力を超えたときには、葉緑体内にデンプンが蓄積されます(不溶化)。
ところで、双子葉植物の葉がデンプンを蓄積し、単子葉植物の葉が糖を蓄積することが知られています。ただし、これは一般的な傾向であって例外もあり、また、デンプンや糖の蓄積の程度には植物によって大きな幅があります(また、同じ植物でも、生育段階や環境条件によって違います)。そんな訳で、先ずは典型的な場合について、実験により確認されることをお勧めします。なお、「単子葉植物はどうして葉でデンプンをすぐに糖の形にかえるのですか?」とありますが、糖が何時もデンプンを経由して作られる訳ではありません。単子葉植物の葉が糖の形で有機物を貯える傾向がある理由が、維管束の配置など葉のつくりと関係しているかどうかについては説明できません。
(2)糖の検出試薬としてベネジクト液(あるいはフェーリング液)が有名ですが、これが有効なのはブドウ糖など還元性アルデヒド基をもつ糖の場合に限られます。ショ糖はブドウ糖と果糖が結合した化合物ですが、還元性アルデヒド基を持ちません。したがって、ショ糖をベネジクト液との反応で検出することはできません。血糖(ブドウ糖)濃度の測定に使われる「テステープ」の場合もベネジクト液と同じ原理によるもので、ショ糖の検出には使えません。
ただし、ショ糖を加水分解してブドウ糖と果糖に分けると、還元性アルデヒド基が現れるので、この前処理操作を入れることで、ベネジクト液との反応をショ糖の検出に使うことが可能になります。
操作の概略は以下のようになるかと思います。
1)葉っぱを希塩酸(1モル程度)中で加熱し、ショ糖をブドウ糖と果糖に分解して抽出する。
2)抽出液に苛性ソーダを加え、pHをアルカリ性(塩基性)にする。
3)塩基性にされた抽出液にベネジクト液を加えて発色を見る。
なお、ベネジクト液は調合することが容易ですが、市販もされています(理科実験試薬関係の業者に聞かれるか、インターネット検索をされると簡単に見付かります)。前処理は化学操作になりますので、適当な手引書を見られることをおすすめします(授業で児童にやらせるには、周到な準備が必要かと思います)。要点として、(A)実験に用いる葉っぱの量と発色に用いる抽出液の量の関係を一定にしておくこと、(B)酸加水分解の操作を入れないコントロール(対照)をとっておくことなど、定量的な扱いに留意されることが重要です。
なお、登録番号2239では試験紙によるショ糖の検出について触れられています。
ご質問をありがとうございます。
この質問に関連するQ&Aが本コーナーには多数掲載されておりますので、私の回答で至らぬところを、例えば登録番号1644、2239、0271、0400、0128、0075で補って下さい。
(1)葉緑体で営まれる光合成の過程で作られる有機物は、細胞質でショ糖の形に変換され、大量なエネルギー消費と炭素素材を必要とする生長中の組織や、次世代個体のための貯蔵組織に輸送される流れとなっております。この流れの中で、ショ糖の合成が葉の輸送能力を超えたときには、葉緑体内にデンプンが蓄積されます(不溶化)。
ところで、双子葉植物の葉がデンプンを蓄積し、単子葉植物の葉が糖を蓄積することが知られています。ただし、これは一般的な傾向であって例外もあり、また、デンプンや糖の蓄積の程度には植物によって大きな幅があります(また、同じ植物でも、生育段階や環境条件によって違います)。そんな訳で、先ずは典型的な場合について、実験により確認されることをお勧めします。なお、「単子葉植物はどうして葉でデンプンをすぐに糖の形にかえるのですか?」とありますが、糖が何時もデンプンを経由して作られる訳ではありません。単子葉植物の葉が糖の形で有機物を貯える傾向がある理由が、維管束の配置など葉のつくりと関係しているかどうかについては説明できません。
(2)糖の検出試薬としてベネジクト液(あるいはフェーリング液)が有名ですが、これが有効なのはブドウ糖など還元性アルデヒド基をもつ糖の場合に限られます。ショ糖はブドウ糖と果糖が結合した化合物ですが、還元性アルデヒド基を持ちません。したがって、ショ糖をベネジクト液との反応で検出することはできません。血糖(ブドウ糖)濃度の測定に使われる「テステープ」の場合もベネジクト液と同じ原理によるもので、ショ糖の検出には使えません。
ただし、ショ糖を加水分解してブドウ糖と果糖に分けると、還元性アルデヒド基が現れるので、この前処理操作を入れることで、ベネジクト液との反応をショ糖の検出に使うことが可能になります。
操作の概略は以下のようになるかと思います。
1)葉っぱを希塩酸(1モル程度)中で加熱し、ショ糖をブドウ糖と果糖に分解して抽出する。
2)抽出液に苛性ソーダを加え、pHをアルカリ性(塩基性)にする。
3)塩基性にされた抽出液にベネジクト液を加えて発色を見る。
なお、ベネジクト液は調合することが容易ですが、市販もされています(理科実験試薬関係の業者に聞かれるか、インターネット検索をされると簡単に見付かります)。前処理は化学操作になりますので、適当な手引書を見られることをおすすめします(授業で児童にやらせるには、周到な準備が必要かと思います)。要点として、(A)実験に用いる葉っぱの量と発色に用いる抽出液の量の関係を一定にしておくこと、(B)酸加水分解の操作を入れないコントロール(対照)をとっておくことなど、定量的な扱いに留意されることが重要です。
なお、登録番号2239では試験紙によるショ糖の検出について触れられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2013-05-02
佐藤 公行
回答日:2013-05-02