一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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CAM植物の酸素消去メカニズムについて

質問者:   大学生   hisa
登録番号2852   登録日:2013-04-29
まず質問に至った背景ですが、過去の質問である登録番号1341の「CAM植物の酸素放出」についての回答を見て疑問に思いました。その時、JSPPサイエンスアドバイザーの浅田先生は「PSIのサイクリックを利用しなるべく酸素を発生させないようにするか、あるいは水の多い朝方に気孔を開いて酸素を放出しNADPHを生産する」とのお答えをされていました。
 ただ、興味に思ったのですが水水サイクルによって酸素を水に変換したほうが酸素量は減るし、水の量は増えて一石二鳥ではないのでしょうか。酸素を水に還元するための還元等量は砂漠や乾燥地域に生息することから過剰の光エネルギーを受けるために十分にあると考えています。
 実際のところ、CAM植物の水水サイクルの活性はどうなっているのでしょうか?NCBI等で調べましたが、関連論文は見つけられませんでした。調べてみるともしかしたら面白いかもしれないでしょうか?
hisa様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。しかしご質問の内容はきわめて専門的なことですので、本来ならこのコーナーにはそぐわないと思います。ですが、あなた自身が答を探すのも大変なようですので、取り上げることにしました。回答を京都大学大学院生命科学研究科の佐藤文彦先生にお願いしました所、幾人かのこの分野の研究者に聞いて下さり、以下のような回答をまとめてくださいました。これで納得頂けるかと思います。


回答
『専門的な質問であり、質問者ご自身も感じておられるように、いろいろな議論があり、正確にお答えすることは難しいというのが、幾人かの専門家に聞いた結論です。実のところ、水水サイクル(Water-Water cycle; WWC)によって活性酸素が生成し、消去されますが、その活性は低く、生理的に、どれだけの寄与をしているかは、さらなる定量的な解析が必要です。なお、WWCにより酸素が消去されますが、それは、水を分解したものに相当しますので、酸素の出入り、水の出入りとしては、差し引きゼロとなり、ご期待のように、酸素が新たに消去される、水が増加するということはありません。

なお、CAM植物のWWCに関しての研究は、専門家にも、しられておらず、もし、興味を持たれたのなら、ご自身の研究テーマとされることもよいかもしれません。たとえば、クロロフィル蛍光による光化学系2(PS2)の測定、P700との同時測定によるPS2-光化学系1(PS1)による直線的電子伝達(LET)とPS1を介したサイクリックな電子伝達(CET)の測定、さらに二酸化炭素の吸収を測定すると概要が見えるのではないかとアドバイスを戴きました。また、WWCの活性は、水系では酸素の安定同位体を利用した方法が浅田・三宅から報告されているとのことです。
また、テーマが面白いか面白くないかは研究に携わるご本人の気持ちであるとの意見があることを申し添えておきます。』

佐藤 文彦(京都大学大学院生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2013-05-10
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