一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の構造について

質問者:   一般   木村
登録番号2862   登録日:2013-05-12
近所のサクラ(樹高6mくらい。種名不明。今さくらんぼがたくさんなってます)の樹皮がはがされるということがありました。

下から1.2mくらいの部分をほぼ一周(直径79cm)しています。
はがされた厚みは、厚い所で約9mm、薄い所では約2mmです。

それぞれの面積は、17cm×28cm、1.4cm×57cmはがされています。

サクラは腐りやすいので癒合剤や木工用ボンドを塗ればいいと聞いたので、実行しました。


そこで、疑問に思ったのは、

①樹木は、外側から何cmが、栄養分を吸い上げたり、生存に必要なのか?
②癒合剤、ボンドは何に効いているのか?
③このサクラは枯れないか?
④枯れないようにするために何かできることはあるか?

ということです。


このサクラは、下から1.5mの所で二股に分かれています。
0.9×17×28cmに亘ってはがされた部分の上に生長した部分(幹・枝)は
枯れてしまうのでは、と思っています。

樹皮がはがされてから一ヶ月くらい経ちますが、
葉は青々としていて、全然萎れてる気配はありません。

上手く説明できたとは思いませんが、お答えいただければ、うれしいです。
よろしくお願いします。
木村 さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
実際の状態を見ないとわかりませんが、質問に記載されている情報だけで推定してみます。
樹木の幹は樹皮と材とからできていますが、さらに細かくみると外側から、外樹皮、内樹皮、辺材、心材と呼ばれる部分からなっています。内樹皮は主に篩部で、光合成産物やその他代謝物の通路、辺材は通導組織として働いている導管(あるいは仮道管)で主に根で吸収した水の通路となっています。内樹皮と辺材との境目には形成層があり、力を加えれば容易に剥がれます。樹皮を幹を一回り剥ぎ取る(環状剥離)と光合成産物の通路が失われますので樹木は枯死します。完全に環状剥離された場合にはその樹木は助けようがないと思います。樹皮の厚さは、幹の径と相関があり樹齢や樹種によって大きく違いますが、樹齢25年から50年のアカマツ、ヤマザクラ、クヌギ、スギでの測定では0.7cmから1.5cmという値が出されています。また、上にいくにしたがい薄くなります。
さて、このサクラは、樹高約6m、地上高1.2mで直径が79cmとありますが、間違いないでしょうか。樹高6mの樹木で胸高の径が79cmとは異常に太い樹木となります。ヤマザクラの1例を見ますと、樹齢25年、樹高9.1mで胸高周囲は32cm とありました。このヤマザクラの樹皮厚は地上1mのところでおよそ1.3cmとあります。一般に樹皮の厚さは幹の径と相関がありますので、直径79cmの樹木の樹皮は2cmを超えると思われます。
はがされた量は0.9cm x 17cm x 28cm、0.2cm x 1.4cm x 57cmで、最も長い部分が周囲に沿った長さとしても、はがされた周囲は85cm(28+57cm)が最長となります。径が79cmとすると、単純な計算では周囲はおよそ250cmになりはがされた部分は環状剥離状態ではないうえ、はがされた厚さから推定しても樹皮の通導組織はかなり残っていますので、樹木にとっては「重傷」ではあっても枯死するほどではありません。「直径79cm」というのが「周囲79cm」の間違いだとすれば二つの剥離のつながり方のよっては環状剥離状態にもなります。しかし、はがされた厚さが9mmの部分は内樹皮を含めてはがされている可能性はありますが、それだけでは長さ28cmですから環状剥離状態にはなりません。厚さが2mmのところでは外樹皮の一部がはがされた程度で樹皮の通導組織である篩部は残っていますので問題はないはずです。まとめると、このサクラは樹皮が部分的に剥離されたと思われますので剥離部分から病原菌が侵入しない限り枯死することはないと思います。
癒合剤や木工ボンドは、傷口を塞いで病原菌の侵入を妨げる働きをしています。どちらも合成樹脂エマルジョンですが、癒合剤には殺菌剤が加えられていますのでより効果的と考えられます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-05-14
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