一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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レタスの体内時計の実験について

質問者:   小学生   あやきち
登録番号2864   登録日:2013-05-18
はじめまして。私は小学校5年生の女の子です。
今日の夕刊で、レタスに体内時計があり、それが一日22時間となっていることを知りました。
私は去年の夏休みにアサガオの体内時計について調べたことがあり、植物の体内時計についてとても興味があるので、今回も、ぜひレタスのことについて調べてみようと思っています。
調べ方としては、レタスを、外で普通に栽培するものと、電灯などを使って、昼と夜をそれぞれ11時間ずつにして栽培するものとに分けて、その成長の比較をしてみようと思っています。

そこで質問なのですが、

1.レタスの昼と夜の時間の調整は、種を撒くところからするのでしょうか?それとも発芽してから、普通のものと、時間を調整するものとに分けたほうがいいのでしょうか?
2.時間を調整するほうのレタスは、ずっと室内で栽培して環境を変えないほうがいいでしょうか?たとえば、「昼」の時間帯の時に、省エネのために外へ出して太陽の光をあてることは避けたほうがいいでしょうか?
3.この実験について、他に注意しないといけないことについて教えて下さい。

どうぞよろしくお願いします。
あやきちさま

質問ありがとう。5年生で新聞をよんでいるなんてすごいね。運が良いことに、新聞で紹介されていた福田弘和先生は、みんなのひろばを一緒にやっている青木考先生と同じ大学の先生でした。そこで、青木先生が福田先生から直接ご返事をもらってくれましたよ。新聞記事の先生に直接返事をもらえるなんてすごいね。実験楽しんでください。



[回答]
ご質問ありがとうございます。大阪府立大学の福田弘和といいます。

アサガオの体内時計は、室内でも決まった時間に花が開いて驚きで面白いですよね。その他に体内時計で有名なのは、オジギソウの葉の運動や、インゲン豆の苗の葉の運動、などありますね。植物は1日のサイクルで動いていることが多いので、ビデオカメラで1日中撮影して早送りするとそのサイクルが見えて面白いです。最近私は、ホウレンソウなどでも1日のサイクルで動いていることを観察しました。

レタスにも体内時計があり、遺伝子の発現を調べると約1日のリズムを刻んでいます。このリズムを「だいたい1日のリズム」という意味で「概日(がいじつ)リズム」といいますが、実は照射する光の強さや色によって変化することが古くから知られています。この現象を「アショフの法則」といい、植物だけでなく動物でも知られている現象です。
 植物では、弱い光ではリズムの長さ(周期)が24時間よりも長くなり、強い光では周期が短くなります。また、光の色によっても周期が変化し、青色光よりも赤色光の方が周期を短くする性質があります。

このように、体内時計の速さ(概日リズムの周期)というのは、実は光によって少し変わるというのがポイントです。最近、植物工場ではLED(発光ダイオード)という省エネ型の照明を使うことが多いですが、LEDの色や強度によってレタスの概日リズムをコントロールしています。

> 1.レタスの昼と夜の時間の調整は、種を撒くところからするのでしょうか?
> それとも発芽してから、普通のものと、時間を調整 するものとに分けたほうがいいのでしょうか?
発芽してから、時間を調整しても大丈夫です。
実際に大きく成長するときに、昼と夜の時間を調整をしてあげると良いと思います。
> 2.時間を調整するほうのレタスは、ずっと室内で栽培して環境を変えないほうがいいでしょうか?
> たとえば、「昼」の時間帯の 時に、省エネのために外へ出して太陽の光をあてることは避けたほうがいいでしょうか?
とても素晴らしいアイディアですね。太陽の光には、色んな波長(紫外線から青、緑、黄、赤、赤外線・・といった様々な色)が混ざっているので概日リズムの周期にどのような変化が現れるか分かりませんが、もしかしたら驚きの結果が出るかもしれませんね。
> 3.この実験について、他に注意しないといけないことについて教えて下さい。
生育には個体差があるので、実験するときは数株ずつ栽培してみるといいかもしれませんね。

福田 弘和(大阪府立大学)
JSPP広報委員長
長谷部 光泰
回答日:2013-05-24