一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の知性について

質問者:   会社員   ノック
登録番号2865   登録日:2013-05-22
TEDというプレゼンテーションの番組で,イタリアの植物生理学者のステファノ・マンクソーという方が植物の“知性”について発表をされていました。
植物の枝分かれした根の先端が,互いに電気的な情報をやりとりしてインターネットのようなネットワークをつくっているといった話は非常に興味深いのですが,彼の研究している内容は,植物学の分野では認められていることなのでしょうか? それとも,植物に音を聞かせるとおいしくなるといった話のように,まゆつばものの話なのでしょうか?
ノック さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。

ご質問の内容を理解するために2010年7月に収録されたという講演を見、また関連する論文、解説をいくつか読みました。
講演(http://www.ted.com/talks/stefano_mancuso_the_roots_of_plant_intelligence.html) は短いものでこれが全部かどうかわかりませんが、そのほとんどは植物の世界を正しく語る興味深いものです。植物の刺激応答の生理学的研究をしている方のようで、動物の行動、刺激応答性との間に共通性があるとの指摘は現代では当然と受け入れられているものです。動物と植物の共通性をさらに発展させ「植物神経生物学―Plant Neurobiology―」という分野を確立しようとの意図で活躍をしているようです。私が気になる点は、動物の働きを示す「用語」を拡大解釈して植物の挙動、行動の説明に適用することが少しばかり急ではないかということです。動物の神経伝達には活動電位が重要だと同じように植物にも活動電位が重要な働きをしています。だから、植物にも「脳類似 Brain-like」の中心があり、それは根先端にある、「知性Intelligenceとは問題を解決する能力であると定義」すれば植物も知性がある、と表現を修辞的以上に意味を持たせている点には違和感を覚えます。しかし、これらを修辞的、比喩的にとらえれば間違ったことを主張しているものではありません。

そこで「植物の枝分かれした根の先端が,互いに電気的な情報をやりとりしてインターネットのようなネットワークをつくっている」との表現は認められているのかとのご質問ですが、「植物の各部分(根、茎、葉にあるすべての器官、組織)が何らかの情報をやり取りしてインターネットのようなネットワークをつくっている」とすれば受け入れられています。刺激の受容、情報の発信は根の先端だけではありません。また、常に「電気的な情報」のやり取りだけではありません。根系の展開がインターネット展開の様相に類似しているので使った修辞的表現ととるべきで、実態はかなり違ったものでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-05-24
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