一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ファイトレメディエーション

質問者:   高校生   あこ
登録番号2866   登録日:2013-05-26
植物にホルムアルデヒドなどを吸収させて空気の浄化をおこなうことを資料で知りました。その際、植物は取り込んで無害化するとありました。これは植物がホルムアルデヒドを無害な別のものに変えてしまうということですか、それとも単に植物が吸収するから人間にとって無害になるということですか。もし無害なものに変えるのであればその仕組みを教えてください。また室内では光が足りないのであまり浄化できないと思うのです。うまく浄化させるに条件にはどんなものがあげられますか。教えてください。
あこ さん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ファイトレメディエーションとは植物よ利用して環境(汚染)の浄化を計る方法ですが、本コーナーでも関連の質問と回答がいくつかありますので、ご覧になっていることと思います。念のため「ファイトレメディエーション」という語句で検索していただければわかります。
植物は空気中に含まれるいろいろな物質を吸収(取り込み)します。葉にある気孔がその主な取り込み(侵入)口ですが、一部の物質は葉や茎の表皮からも直接体内に入ることもあります。いわゆる新建材が建物や内装品が使われるようになってから、それらの資材から放出される各種の揮発性有機物質やアンモニアのような無機物質が健康を害するということで、問題になってきました。なかでもフォルムアルデヒドはその代表的な化合物の一つです。そこで、植物を使って室内に放出されるこれらの有害物質を取り除くことはできないかという考えが出て来たのです。NASAが宇宙船という完全に密閉された空間の空気を清浄化する手段としてベンゼン、フォルムアルデヒド、トリクロロエチレンなどにたいするさまざまな植物の濾過能力を調べています。英語ですが関心があれば Wikipediaをご覧下さい(*)。韓国の研究者が85種の植物の空気中のフォルムアルデヒド除去能力を調べて報告しています(**)。 それによるとシダの仲間が高い能力を示し、中でもゼンマイ(Osumunda japnica)が最も高い値(6.64μg・m-3・cm-1(葉面積)/5時間)を示したということです。
フォルムアルデヒドはタンパク質や核酸といった生体高分子物質と容易に結合できるきわめて反応性の高い化合物なので、動物にとっても植物にとっても有毒な化合物ですが、生体内でも生成されます。しかし、直ぐに解毒されてしまいます。解毒の機構は生物種によっていろいろな反応がありますが、ほとんどの生物種、特に全ての真核生物に共通している解毒反応はグルタチオンという化合物を用いる反応系です。この反応は簡単にまとめると、フォルムアルデヒドとグルタチオンが2ステップの反応で結合します。第一ステップは酵素を使わないが、第二ステップは酵素反応です。次にこの結合してできた化合物は別の酵素の働きで蟻酸とグルタチオンに加水分解されます。蟻酸はそれ自体やはり有毒ですが、多くの場合酸化されて二酸化炭素になります。一部は生体内の他の化合物の合成に利用されます(***)。
 空気中のフォルムアルデヒドが植物体内に入るのは主として気孔からだとすると、気孔が開いていないといけませんね。だとすると、光は必要かもしれません。うまく浄化させる条件は一概には決まりません。植物の種類、気孔の開度に影響する光量、温度それに室内の空気の流れなどなどの室内環境条件で著しく変わってくるでしょう。 
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2013-06-12
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