一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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がく片の働き

質問者:   会社員   たくお
登録番号2908   登録日:2013-07-25
花のがく片が果実まで残っているのは、果実では柿、野菜ではトマト、イチゴなどがあると思います。当質問コーナーでは、花の形態形成でのがく片について解答がありますが、果実に付いているがく片の働きについては、記述がありませんでした。柿のへたをとると果実が大きくならない話も聞いたことがあります。がく片の働きを教えてください。
たくお さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご指摘のように、カキ、トマト、イチゴの果実には萼が残って「へた」となっています。萼は第一に花蕾を保護する役割があるとされています。受粉、受精がすんで果実が発達するときに、萼片が花弁と一緒に落ちてしまうもの、と萼片がいつまでの残っているものの2つの型があります。果実は雌しべの下部にある子房が発達したものです。子房のある位置と花弁・萼片との相対的な位置関係を見ると、花弁・萼片基部よりも上に子房がある場合を「子房上位」、花弁・萼片の基部よりも下に子房がある場合「子房下位」、として区別しています。その中間型もあります。カキは子房上位の花で、子房が発達しても萼が残る型です。トマト、イチゴも同じです。子房上位、残存萼型の果実が成長すると果実と母樹との接続側に萼が残り「へた」となります。因みに、子房下位の場合には、ビワやリンゴのように枝との接続部の反対側(頭頂部)に残ります。
さて、カキは特に立派で大きな萼が最後まで残る果実の典型で、果実発達過程での萼の役割を調べた研究は幾つかあります。受精後、果実の成長に先立ってまず萼の成長が始まり、その成長がほぼ終わったころに果実の成長が始まって肥大が盛んになります。果実の発達過程でへた(萼)を除去すると、落果率が著しく高まることが知られています。また、萼片内のオーキシン量もかなり高く、果実の成長に寄与していると推定されています。さらに、カキの果実表皮には気孔はありませんが、萼には表、裏ともに気孔が多くありガス交換が盛んなことが推定されます。これらの結果、カキの萼は単に、花蕾の保護ばかりでなく、呼吸を補完したり、成長ホルモンを供給したりと果実の成長発達にも重要な働きをしていると推定されています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-07-31
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