一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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気孔開閉の仕組み

質問者:   その他   赤羽
登録番号0291   登録日:2005-06-28
質問させて頂きます。

「気孔はカリウムイオンや糖類の取り込みで、膨圧が高まると開く」と習いました。

「H+-ATPase が活性化される→過分極がおこる→カリウムイオンが細胞内に流れ込む→水が入ってくる→膨圧が高まり気孔が開く」という一連の流れはわかりましたが、糖類のほうはどうやって取り込み、また作用するのかがよく分かりません。

ご教授お願いします。
赤羽さま
 みんなの広場へ質問をお寄せ下さり有難うございました。気孔の開閉について詳しい九州大学の島崎研一郎先生にご回答をお願いしましたところ、以下のような詳しい回答を頂くことができました。お役に立てば幸いです。

 なかなか鋭い質問です。実はいまそれが研究者の間で問題になっているところです。定説が出来上がっているわけではありません。しかし、いくつかの状況証拠があります。糖はおもにショ 糖が働きますのでそれについてお答えします。
 ひとつは孔辺細胞のデンプンが分解されて、グルコースやマルトースの形で葉緑体から細胞質に輸送され、そこでショ糖にまで合成されるというものです。グルコースとマルトースからショ糖への合成に必要な酵素は細胞質にあります。
 もうひとつは孔辺細胞の細胞壁に存在するショ糖が、取り込まれる可能性です。これも証拠があります。とりこみの機構は、ショ糖/H+共輸送体がショ糖とH+を一緒に細胞質に取り込むとするものです。つまり、光合成が盛んに行われてショ糖などがたまってくる午後には、孔辺細胞のまわりの細 胞壁中のショ糖濃度があがり、それとH+が一緒に細胞内にとりこまれるとするものです。実際、孔辺細胞はそのようなショ糖の取込み能があることがしめされています。外液のpHが低い方が取込みは促進され、細胞膜H+-ATPaseを活性化し、細胞壁にH+を放出してやるとショ糖の取込みは大きく促進されます。
 以下は私の考えですが、午前中は細胞膜H+-ATPaseの形成する電気的勾配に従ってK+が取り込まれ、午後になると同じ酵素によって形成されるpH勾配によってショ糖が取り込まれるのではないかと思います。細胞膜 H+-ATPaseが青色の光によって活性化されるのは御存じだと思います。この経路が糖類の気孔開口作用において中心的役割を果たすと考えています。
 このようにして取り込まれたショ糖が浸透圧を上昇させます。

 島崎 研一郎(九州大学大学院理学研究院生物科学部門)
JSPPサイエンス・アドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2009-07-03
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