質問者:
一般
いぬたで
登録番号2963
登録日:2013-09-18
秋になりタデの仲間(イヌタデやサクラタデなど)を見かける機会が増えました。みんなのひろば
イヌタデの花について
タデの花に関して質問がございます。図鑑や植物学の本などで、タデの花(Persicaria)に関しては、「(花弁が5枚あるようにみえるが)花冠ではない」「単花被花である」「萼である」「花被(萼)である」などの記述が見当たります。
私は、「花被」と呼んでおけば大きな問題はないのではないかと思い、そのように理解していました。しかしながら、「萼である」という記述が意外と多く目にとまり、どのように理解したらよいのか少々混乱しております。
質問を整理しますと、
①タデの仲間の5個の花弁のようなものが萼に対応するものである という直接的な証拠・根拠はあるのでしょうか?(根拠に関する 記述が見つかりません)
②あるいは、単花被花の場合は、便宜上、萼としている、など 何か手続き上の問題なのでしょうか?
③また、これは一般的な質問となりますが、単花被花とされている 分類群について、その花被が具体的に花冠に相当するものなのか あるいは萼に相当するものなのか、しっかりと確認されている 事例はあるのでしょうか?(あるいは単花被花の場合は、 それがどちらに相当・由来するかという問題自体が、あまり 意味のないことなのでしょうか?)
「萼である」という強力な根拠がある場合は萼と呼びたいのですが、文献が見当たらず、質問させていただきました。
以上、宜しくお願いいたします。
いぬたで様
ご返事すっかり遅くなってすいませんでした。庭のイヌタデを見るたびに気になっておりましたが、なかなか時間がとれませんでした。
被子植物の花は雌しべと雄しべが葉的器官で覆われた構造をしています。この葉的器官を花被と呼びます。花被がはっきり2型に分化している場合があり、花の外側で葉的で保護器官として働く器官を萼片(萼片の総体を萼)、内側で昆虫の誘因などに働くため色づくことが多い器官を花弁(花弁の総体を花冠)と呼びます。ですから、無花被以外の全ての被子植物は花被を持ちます。被子植物の一部は花被が2型に分かれていて、それらを萼片や花弁と呼びます。タデ科の場合は、花被は通常5枚ですが、5枚の間に大きな形態変化がありませんので、萼片や花弁とは呼ばず、花被と呼びます。ですから、定義上は萼片ではなく花被です。
花の進化の過程で、萼片と花弁を持っていた祖先からどちらかが退化して子孫が進化する可能性もあります。タデ科はイソマツ科に最も近縁で次にギョリュウ科に近縁だということがわかってきました。イソマツ科もギョリュウ科も萼片5枚と花弁5枚を持ちます。ということは、これらの科とタデ科の共通の祖先は萼片5枚と花弁5枚を持っていた可能性が高くなります。とすると、タデ科が進化するときに花弁を失って萼片だけになった可能性も高くなります。一方、タデ科で萼片が無くなって花弁のみになり、その後で花弁が萼片のような形態に変化した可能性も考えられますが、花弁が退化したという仮説よりも複雑です。従って、萼片と花弁の両方を持っていたタデ科の祖先が花弁を失って現在のタデ科が生まれたと言う仮説の方が単純でおこりやすそうです。もしも、この仮説が正しいなら、タデ科の花被は萼片と呼んで良いと思います。しかし、どちらの仮説が正しいかを証明するには、発生過程の詳細な比較や遺伝子の働き方などを調べる必要があり、現状では研究が進んでいませんので、「萼」と呼ぶのは早計です。せいぜい、「萼のような形態をした花被」と呼ぶのが良いかと思います。ただ、タデ科の中にはソバやサクラタデのように花弁のような花被を持つ種類もいますので、複雑な進化をしている可能性も多いにあります。
現生種で明らかに花弁または萼片が退化し、どちらかの器官だけが残っていることがはっきりしているものは無いと思います。
花を比較するのはとっても面白いですよね。これからもどんどん花を観察して、質問およせください。
ご返事すっかり遅くなってすいませんでした。庭のイヌタデを見るたびに気になっておりましたが、なかなか時間がとれませんでした。
被子植物の花は雌しべと雄しべが葉的器官で覆われた構造をしています。この葉的器官を花被と呼びます。花被がはっきり2型に分化している場合があり、花の外側で葉的で保護器官として働く器官を萼片(萼片の総体を萼)、内側で昆虫の誘因などに働くため色づくことが多い器官を花弁(花弁の総体を花冠)と呼びます。ですから、無花被以外の全ての被子植物は花被を持ちます。被子植物の一部は花被が2型に分かれていて、それらを萼片や花弁と呼びます。タデ科の場合は、花被は通常5枚ですが、5枚の間に大きな形態変化がありませんので、萼片や花弁とは呼ばず、花被と呼びます。ですから、定義上は萼片ではなく花被です。
花の進化の過程で、萼片と花弁を持っていた祖先からどちらかが退化して子孫が進化する可能性もあります。タデ科はイソマツ科に最も近縁で次にギョリュウ科に近縁だということがわかってきました。イソマツ科もギョリュウ科も萼片5枚と花弁5枚を持ちます。ということは、これらの科とタデ科の共通の祖先は萼片5枚と花弁5枚を持っていた可能性が高くなります。とすると、タデ科が進化するときに花弁を失って萼片だけになった可能性も高くなります。一方、タデ科で萼片が無くなって花弁のみになり、その後で花弁が萼片のような形態に変化した可能性も考えられますが、花弁が退化したという仮説よりも複雑です。従って、萼片と花弁の両方を持っていたタデ科の祖先が花弁を失って現在のタデ科が生まれたと言う仮説の方が単純でおこりやすそうです。もしも、この仮説が正しいなら、タデ科の花被は萼片と呼んで良いと思います。しかし、どちらの仮説が正しいかを証明するには、発生過程の詳細な比較や遺伝子の働き方などを調べる必要があり、現状では研究が進んでいませんので、「萼」と呼ぶのは早計です。せいぜい、「萼のような形態をした花被」と呼ぶのが良いかと思います。ただ、タデ科の中にはソバやサクラタデのように花弁のような花被を持つ種類もいますので、複雑な進化をしている可能性も多いにあります。
現生種で明らかに花弁または萼片が退化し、どちらかの器官だけが残っていることがはっきりしているものは無いと思います。
花を比較するのはとっても面白いですよね。これからもどんどん花を観察して、質問およせください。
JSPP広報委員長
長谷部 光泰
回答日:2013-10-21
長谷部 光泰
回答日:2013-10-21