一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ゆりの強度

質問者:   一般   なかむー
登録番号2994   登録日:2013-11-25
花瓶などで飾るため趣味でスカシユリの花を育てております。ふと花を水平になるように持ったとき片方はあまりしならないのに対してもう片方がかなり折れるのじゃないかと思うぐらいしなります。育ててる環境は一緒なのですが!

なぜ同じ種類の花でもそのような状況が起きるのか,
茎組織はどうなってるのか知りたいです。

よろしくお願いします。
みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。

状況がよくわかりませんが「花瓶などで飾るため」と「花を水平になるように持ったとき」をキーワードとして「切り花にして水平にもった」ものと想像してお答えすることにいたします。

ご質問は、個体により茎の曲がりにくさ(曲がりやすさ)に違いがあるのは何故かということになります。ユリは単子葉植物で茎の維管束(導管、篩管、繊維細胞がまとまったもの)は周縁部に並ぶばかりでなく、茎の大部分を占める内部の髄組織内にも多数分布していますが、それらのリグニン化は低く物理的強度を与えるほど十分ではありません。茎が曲がらないで立っている力の大部分は皮層、髄といった柔細胞の中に十分量の水があって膨らむ力(中から細胞壁を押し広げるような力)があるからです。この力を膨圧と言います。柔らかな茎が直立できるのも、薄い葉が水平に張ることが出来るのも細胞内の膨圧のおかげです。ゴム風船やタイヤに十分空気が入っていれば、つぶれないのと同じです。スカシユリに限らず、草本類の茎の曲がりにくさは茎の膨圧に大きく左右されます。膨圧は、根からの水吸収の速さと葉の蒸散作用の速さのバランスで決まります。同じ環境に育てた(と思っている)スカシユリであっても個体によって水吸収、蒸散作用が異なり、膨圧も微妙に異なってくることが普通です。さらに、茎を切ったときの切り口も個体によって違いますので、すぐに水に入れても(水切りしても)切り口からの水吸収量は異なります。一方、葉からの蒸散による水の損失はあまり変わりませんから、茎の膨圧の違いが出てくる個体が出てきます。そのため、茎を水平にもったとき、膨圧が小さくなっていた個体(半分しおれた状態)の茎は曲がります。曲がる程度は膨圧が小さくなった程度によります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2013-11-29