質問者:
中学生
アン
登録番号2996
登録日:2013-11-29
登録番号オオカナダモの紅葉
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答をオオカナダモの紅葉の研究を長年続けてこられた百瀬忠征先生にお願い致しました所、添付ファイルにあるような回答をお寄せ下さいました。しっかり、勉強して下さい。なお百瀬先生は私へのメールのなかでこんな事をおっしゃっておられました。「面白いですね!実は、指摘されました現象の解明こそ、現在の私のテーマになっています。」「質問を読んで、何か先を越された様な気がしました。怖いですね。」アン様は専門家を怖がらせる様な質問をしてくださったのですね。
アン 様
面白い現象に気付きましたね。貴女の実験結果は正しかったと思います。
まずは、紅葉誘導の仕組みから・・・・・・
緑色だったモミジの葉が、秋になると緑色のクロロフィルが減少し、代わりにアントシアニンと呼ばれる赤い色素が蓄積されて、紅葉となります。それではなぜ秋になるとアントシアニンが出来てくるのでしょう。秋になって気温が低くなってくると、葉内の糖の量が増加してきます。一方、葉の付け根(葉柄の付け根)には離層と呼ばれる組織が発達してきて、葉内の糖の行き場が失われ、葉内の糖量がさらに増加します。この糖量の増加が紅葉の原因と考えられています。さらに、紅葉が進むと離層も発達し、最後には紅葉した葉が離層によって切り離されます。
実験としては、紅葉する前のモミジの葉の葉脈を傷付けておきますと、傷つけられた先の部分が赤くなります。その時、赤い部分と緑の部分の糖の量を測定してみますと、赤い部分の糖量のほうがが多くなっています。これは古くからの有名な実験で、葉脈が切断されたたことで、葉先からの糖が移動できず、糖量が増加したものと考えられています。
また、カエデの仲間のサトウカエデの幹を環状剥皮「注」すると、環状剥皮された上部の葉が紅葉し、下部の葉は紅葉しません。そこで、糖の量を測定してみますと、上部の紅葉の方が下部の緑葉より多くなっています。これは、環状剥皮によって養分の移動ができなくなり、上部に糖が蓄積されたためと考えられます。このように、葉内の糖量が増加することが、紅葉が誘導される大きな原因と考えられています。なお、どちらの実験でも、光が必要であることは、言うまでもありません。
ところで、オオカナダモの葉をみてみますと、葉の中央部に葉脈のような部分が見られます。これは一般の植物の葉脈に相当しますが、構造が簡単なために“中肋”と呼ばれています。この中肋の構造は簡単ですが、葉脈と同じ茎との物質移動にはたらいています。
茎から外したオオカナダモの葉では、中肋も切断され、茎との物質の移動が出来なくなります。その葉をショ糖溶液で培養しますと、葉の中に吸収された糖は行き場がなくなり、葉内に多量の糖が蓄積され、紅葉が誘導されると考えられます。ちなみに切断葉を蒸留水で培養しますと、葉内の糖量はほとんど増加しないまま、紅葉も誘導されません。
それでは、茎に付いたままの葉はどうして紅葉しないのでしょうか?
次のようなことが考えられます。
・茎に付いた葉では、中肋が切断されていませんから、茎との間の物質の移動が可能です。したがって、培養液中のショ糖が葉に吸収されても、それが茎に移動することによって葉内の糖量が増加しないために、紅葉が誘導されないのかもしれません。
・一方、糖以外に紅葉を誘導するような物質(ホルモン)が関係しているのかも知れません。たとえば、植物の老化を促進するアブシジン酸を溶かした水溶液で、オオカナダモの切断葉を培養すると、紅葉が誘導されます。しかし、茎に付いた葉では、これらの物質が茎に移動することによって、葉の紅葉が誘導されないのかもしれません。
・いずれにしても、茎に付いたオオカナダモの葉が紅葉しない理由(メカニズム)は、いまだに解明されていません。解明されたら、面白いですね!
「注」環状剥皮:幹の樹皮(表皮)を5mm程度の幅で、一周ぐるっと剥いで表皮の中を通っている“師管”という養分の通り道を断つ方法
百瀬 忠征
アン 様
面白い現象に気付きましたね。貴女の実験結果は正しかったと思います。
まずは、紅葉誘導の仕組みから・・・・・・
緑色だったモミジの葉が、秋になると緑色のクロロフィルが減少し、代わりにアントシアニンと呼ばれる赤い色素が蓄積されて、紅葉となります。それではなぜ秋になるとアントシアニンが出来てくるのでしょう。秋になって気温が低くなってくると、葉内の糖の量が増加してきます。一方、葉の付け根(葉柄の付け根)には離層と呼ばれる組織が発達してきて、葉内の糖の行き場が失われ、葉内の糖量がさらに増加します。この糖量の増加が紅葉の原因と考えられています。さらに、紅葉が進むと離層も発達し、最後には紅葉した葉が離層によって切り離されます。
実験としては、紅葉する前のモミジの葉の葉脈を傷付けておきますと、傷つけられた先の部分が赤くなります。その時、赤い部分と緑の部分の糖の量を測定してみますと、赤い部分の糖量のほうがが多くなっています。これは古くからの有名な実験で、葉脈が切断されたたことで、葉先からの糖が移動できず、糖量が増加したものと考えられています。
また、カエデの仲間のサトウカエデの幹を環状剥皮「注」すると、環状剥皮された上部の葉が紅葉し、下部の葉は紅葉しません。そこで、糖の量を測定してみますと、上部の紅葉の方が下部の緑葉より多くなっています。これは、環状剥皮によって養分の移動ができなくなり、上部に糖が蓄積されたためと考えられます。このように、葉内の糖量が増加することが、紅葉が誘導される大きな原因と考えられています。なお、どちらの実験でも、光が必要であることは、言うまでもありません。
ところで、オオカナダモの葉をみてみますと、葉の中央部に葉脈のような部分が見られます。これは一般の植物の葉脈に相当しますが、構造が簡単なために“中肋”と呼ばれています。この中肋の構造は簡単ですが、葉脈と同じ茎との物質移動にはたらいています。
茎から外したオオカナダモの葉では、中肋も切断され、茎との物質の移動が出来なくなります。その葉をショ糖溶液で培養しますと、葉の中に吸収された糖は行き場がなくなり、葉内に多量の糖が蓄積され、紅葉が誘導されると考えられます。ちなみに切断葉を蒸留水で培養しますと、葉内の糖量はほとんど増加しないまま、紅葉も誘導されません。
それでは、茎に付いたままの葉はどうして紅葉しないのでしょうか?
次のようなことが考えられます。
・茎に付いた葉では、中肋が切断されていませんから、茎との間の物質の移動が可能です。したがって、培養液中のショ糖が葉に吸収されても、それが茎に移動することによって葉内の糖量が増加しないために、紅葉が誘導されないのかもしれません。
・一方、糖以外に紅葉を誘導するような物質(ホルモン)が関係しているのかも知れません。たとえば、植物の老化を促進するアブシジン酸を溶かした水溶液で、オオカナダモの切断葉を培養すると、紅葉が誘導されます。しかし、茎に付いた葉では、これらの物質が茎に移動することによって、葉の紅葉が誘導されないのかもしれません。
・いずれにしても、茎に付いたオオカナダモの葉が紅葉しない理由(メカニズム)は、いまだに解明されていません。解明されたら、面白いですね!
「注」環状剥皮:幹の樹皮(表皮)を5mm程度の幅で、一周ぐるっと剥いで表皮の中を通っている“師管”という養分の通り道を断つ方法
百瀬 忠征
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2013-12-13
柴岡 弘郎
回答日:2013-12-13