一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アントシアニンの抽出法

質問者:   高校生   レッドキャベ子
登録番号2997   登録日:2013-11-30
以前、このサイトでアントシアニンの抽出に1%塩酸メタノールを使用するとよいと見たのですが、その理由と仕組みなどを詳しく教えてください。
また、レッドキャベツを使用してアントシアニンを抽出しているのですが、レッドキャベツに含まれるアントシアニンの種類についてもお伺いしたいです。
レッドキャベ子 さん

ご質問をありがとうございます。アントシアニンを抽出しようとしてきた過去の人たちが経験的に行きついたのが「1%塩酸メタノール」の条件、言い換えると、この条件は目的とする物質が教えてくれたのだと言うことができます。

抽出とは、(細胞や組織の)特別な場所に特別な状態で存在するものを、変化を起こさないようにしながら溶液の状態で取り出す過程ですから、ここでは当然いろいろなこと(条件)が問題になります。溶媒(溶剤)に関しては、「性質の似たものを溶かす」の原理に従って、水と親和性が強い(極性の高い)ものは極性の高いメタノールやエタノールに溶けやすいことになります。抽出には、溶剤との接触の場を増やすために破壊力も必要になります。ところで、アントシアニン抽出の過程では、結合している糖や有機酸の離脱が起こりやすく、また一般に、光・pH・温度などの影響が問題になります。アントシアニンは塩酸酸性条件下で塩化物となることで安定化されるとされております。なお、この質問コーナーではアントシアニンのことが数多く扱われており、特に、登録番号0257、1178、2804では、抽出のことが論じられておりますので、そちらの方もご参考にして下さい。

レッドキャベツに含まれるアントシアニンの種類は二十数種類以上もあるようですが、アグリコンの部分はシアニジンが中心で、糖の部分はブドウ糖(グルコース)とソホローズの場合が多いようです。以下に比較的新しい論文を紹介しますので、インターネットでAbstract(要約)の部分だけでも読まれることをお勧めします。

(文献)

P. Arapitsas, P.J.R. Sjoberg and C. Turner (2008) Characterisation of
anthocyanins in red cabbage using high resolution liquid chromatography
coupled with photodiode array detection and electrospray ionization-linear
ion trap mass spectrometry. Food Chemistry 109: 219-226.


JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2013-12-09
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