質問者:
教員
生物教師
登録番号3015
登録日:2014-01-28
初めて利用します。植物の成長と青色光
新課程になり新しい項目が増えて授業の予習に苦労しています。
新課程【生物】の植物の環境応答の単元で、光受容体として、旧課程からあるフィトクロムに加え、クリプトクロムとフォトトロピンが加わりました。
そのうちクリプトクロムは青色光を受容し茎の伸長成長を抑制する、と教科書には載っています。
なぜ、青色光が伸長成長抑制につながるのでしょうか?
フィトクロムが関与する光発芽種子は、赤色光を光合成に利用するためのシステムとして非常に理解がしやすいのですが、青色光も光合成に利用しますよね?なのになぜ青色光を受容すると伸長成長を抑制するのでしょうか?
私の考えとしては、「青色光が当たるということは、周囲に高い植物が無い。だから高く成長する必要がない。伸長成長をやめて肥大成長に切り替えよう」ということかな?と。
詳細な解説がどこにも載っていないので質問させていただきました。
よろしくお願いします。
生物教師さま
ご質問どうも有難うございます。
植物の光受容体を研究されている長谷あきら先生(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻)にお答えいただきました。
「なぜ、青色光が伸長成長抑制につながるのでしょうか?フィトクロムが関与する光発芽種子は、赤色光を光合成に利用するためのシステムとして非常に理解がしやすいのですが、青色光も光合成に利用しますよね?なのになぜ青色光を受容すると伸長成長を抑制するのでしょうか?」
確かに、発芽についてはっきりとした影響が出やすいのは赤色光でありフィトクロムなのですが、伸長抑制効果は赤色光、青色光の両方でみられ、それぞれ、フィトクロムとクリプトクロムの働きによることが分かっています。
赤色光、青色光が光合成に使われる光であることと、両者が伸長に対して同じ効果をもつことには、何らかの意味があるのかもしれません。
「私の考えとしては、「青色光が当たるということは、周囲に高い植物が無い。だから高く成長する必要がない。伸長成長をやめて肥大成長に切り替えよう」ということかな?と。」
はい、これがいわゆる避陰応答(他の植物の陰から抜け出す応答)になります。従来は、避陰応答はもっぱらフィトクロムの働きで説明されてきましたが(教科書の記述もそうなっていると思われます)、最近では青色光が弱くなることも避陰応答を誘導することが分かってきました。そのようなわけで、おっしゃるような理解で正しいと思います。
ちなみに、クリプトクロムの方がフィトクロムより重要な役割を果たしていそうな応答に、花芽形成制御がありますが、これについても、クリプトクロムとフィトクロムの両方が効果がある、と考えていただくのが正解かと思います。
非常に大雑把にまとめると、植物は、「明るいか暗いか」ということをクリプトクロムとフィトクロムを利用して、二重に感知していることになります。これは想像ですが、2つの独立な感知システムを働かせることで、光環境の変化に、誤ることなくより適切な応答ができているのではないかと思います。
長谷あきら
(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻植物学系植物生理学研究室)
ご質問どうも有難うございます。
植物の光受容体を研究されている長谷あきら先生(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻)にお答えいただきました。
「なぜ、青色光が伸長成長抑制につながるのでしょうか?フィトクロムが関与する光発芽種子は、赤色光を光合成に利用するためのシステムとして非常に理解がしやすいのですが、青色光も光合成に利用しますよね?なのになぜ青色光を受容すると伸長成長を抑制するのでしょうか?」
確かに、発芽についてはっきりとした影響が出やすいのは赤色光でありフィトクロムなのですが、伸長抑制効果は赤色光、青色光の両方でみられ、それぞれ、フィトクロムとクリプトクロムの働きによることが分かっています。
赤色光、青色光が光合成に使われる光であることと、両者が伸長に対して同じ効果をもつことには、何らかの意味があるのかもしれません。
「私の考えとしては、「青色光が当たるということは、周囲に高い植物が無い。だから高く成長する必要がない。伸長成長をやめて肥大成長に切り替えよう」ということかな?と。」
はい、これがいわゆる避陰応答(他の植物の陰から抜け出す応答)になります。従来は、避陰応答はもっぱらフィトクロムの働きで説明されてきましたが(教科書の記述もそうなっていると思われます)、最近では青色光が弱くなることも避陰応答を誘導することが分かってきました。そのようなわけで、おっしゃるような理解で正しいと思います。
ちなみに、クリプトクロムの方がフィトクロムより重要な役割を果たしていそうな応答に、花芽形成制御がありますが、これについても、クリプトクロムとフィトクロムの両方が効果がある、と考えていただくのが正解かと思います。
非常に大雑把にまとめると、植物は、「明るいか暗いか」ということをクリプトクロムとフィトクロムを利用して、二重に感知していることになります。これは想像ですが、2つの独立な感知システムを働かせることで、光環境の変化に、誤ることなくより適切な応答ができているのではないかと思います。
長谷あきら
(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻植物学系植物生理学研究室)
JSPP広報委員長
松永幸大
回答日:2014-02-03
松永幸大
回答日:2014-02-03