一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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炭酸ガス施用について

質問者:   自営業   アツミ
登録番号3016   登録日:2014-01-29
最近、炭酸ガス施用技術が施設園芸ではトレンドになっています。
炭酸ガスで光合成を促進させるならば伸長促進もするのでしょうか?
また、開花促進もするとのことですが、光合成によるものなのでしょうか?
アツミ 様

質問をお寄せ下さりありがとうございます。
お仕事に深く関わることのようですので、ここでは一般的な回答とさせていただきま
す。

昼間のように光が十分に強く、また、気温も高い条件の下では、光合成の速度は二酸化炭素(炭酸ガス)の濃度によって律速されます。このため、二酸化炭素施用(二酸化炭素濃度の増強)の条件では光合成の速度が増大し、その結果として細胞の分裂と成長を介した植物の生育が促進される可能性があります。二酸化炭素濃度の増強による植物の生育促進は例えば「FACE(Free Air Carbon dioxide Enrichment)」の実験などによっても示されています。ただし、植物の生育は実際には代謝過程の微妙なバランスの上に成り立っておりますので、二酸化炭素施肥が何時も生育を増進させるとは限らないのが事実だと思います。
ところで、光合成による成長で背丈が伸びるのは当然ですが、植物体の伸長にはジベレリンなどのホルモンの働きが深く関わっておりますので、二酸化炭素施肥が何らかの過程を経てホルモンの代謝系に影響を及ぼす可能性も考慮される必要があります。
植物の花芽形成には日長や温度などの条件が重要であることはよく知られていますが、光合成速度の増大により促進された植物体の成長や、炭素と窒素などの栄養バランス(例えば、窒素飢餓)が開花促進のトリガーとなる場合もあるようです。

以上のような事情で、二酸化炭素施肥の影響は植物の種類によって大きく異なる可能性があるので、個別のケースについて検討する必要があるのではないでしょうか。施設園芸の分野では具体的な事例の蓄積が多いのではないかと想像します。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2014-02-03
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