一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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胚珠のいち

質問者:   中学生   ブルースカーフ
登録番号3025   登録日:2014-02-23
胚珠ははなの奥にあります。柱頭にはおおくの花粉が受粉しますが、受精できるのはひとつだけです。胚珠と柱頭が離れているのにはどのようなメリットがありますか。あと、胚珠はなぜ、そのように奥にあるのですか。
ブルースカーフ様

ご質問ありがとうございます。一般的には、花粉管が柱頭から胚珠内の胚嚢に長距離を伸長する過程で競争が起こり、最初に到達する「一等賞」が受精にたずさわると考えられています。さらに、この競争の過程で、異種の植物の花粉管も排除されると言われています。こうした説明は正しいか間違っているかと言われれば、正しいとは思います。しかし、気をつけないといけないのは、雌蕊の中の花粉管の動きを、直接生きたまま観察している人はいないという点です。たしかに結果的に胚嚢に最初に到達した一等賞が、ふつうは受精にたずさわります。しかし、たとえばそうした花粉管は常に先頭を走り続けるのか、あるいはいろいろなステップで選抜される中で最終的に一等賞に躍り出て受精するのかで、印象はだいぶ変わると思います。最先端の研究では、雌蕊の中での花粉管の動きを直接とらえることが試みられていて、間もなくそうした成果が発表され始めると期待されます。

雌蕊の中の花粉管の動きを直接とらえられるようになると、様々なことが明らかになります。たとえば多くの植物で一つの雌蕊に複数の胚珠が含まれますが、どのように花粉管は一つの胚珠に群がったりせず効率よく分配されるのかという疑問です。また、胚嚢に到達した花粉管が受精に失敗した時だけ、2本目の花粉管が受精を回復するために胚嚢に誘導されることが最近発見されました。その2本目の花粉管はどこから誘導されてくるのか、明らかになるかも知れません。また、質問と関係するのですが、雌蕊の長さは近縁な植物種間でも大きく異なります。私はその雌蕊の長さが、種固有の受精のタイミングをはかるのに役立っているのではないかと考えていますが、そうした仮説に迫ることも可能になると思います。

このように、ブルースカーフさんが今回疑問に思ったことは、まだ答えが出ていません。植物の生殖のことに限らず、興味をもったことについて、ぜひ新聞などで発表される最新の研究成果に注目してもらえればと思います。
JSPP広報委員
東山哲也
回答日:2014-03-04
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