一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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表皮剥離法

質問者:   その他   山田 康二
登録番号0303   登録日:2005-07-12
今孔辺細胞の観察をしているのですが、薄い葉、破れやすい葉はまだ剥離ができるのですが、厚い葉だとうまく剥がせないのですが。
何か良い方法がありましたらご教授くださるとありがたいです。
お願いします。
山田康二さま
 大分おまたせしました。レプリカを用いての観察ではなくて、剥がした表皮を用いたいとのご希望でしたので、孔辺細胞を含む表皮の細胞骨格の見事な写真で有名な国際キリスト教大学の風間晴子先生と、気孔の開閉機構についての研究を為さっておられる九州大学の島崎研一郎先生に、ご回答をお願いいたしましたところ、以下のようなご回答をお寄せくださいました。なかなか難しそうですが、頑張ってみて下さい。

(1)風間先生からのご回答
お尋ね件ですが、お答えするのはなかなか難しい質問ですね。
私もアクリルを溶かしてレプリカを作るのが一番良いと思いますがどうしても剥離切片を調整されたいと言われるのは剥離切片でなければならない何らかの理由があるからでしょうか?生体観察が希望でいらっしゃるとか?

生きたままで、表皮の剥離片を調整するには、以下のようなことが考えられるかと思いますが言葉で説明するのは非常に困難です。
実演すれば、勘所を含めてお伝え出来るかと思いますが。。。

まず、先端がきっちり合った(油砥石で研ぐ等した)ピンセットを用意します。材料の葉や茎は乾燥させないように注意して(水を垂らすなどして)ピンセットの先で掴んだ端を、そうっと引っ張り上げながら、もう一方の手(親指と人差し指を上手に使って)で、葉の本体の方を表皮を剥がすのとは反対の方に曲げながら、少しずつ、少しずつ、力を入れ過ぎないようにして表皮を剥がします。この時、表皮が剥がれ易いところで剥がれるように心がける、つまり、余計な引っぱりのストレスを出来るだけ与えないようにして剥離片を調整するように工夫して、私は調整しています。

それでも、尋ねて来られているように材料によって扱いは異なりますし例えば、私の扱っているキュウリでは、同じキュウリの芽生えでも光中で育てたものと暗中で育てたものでは、育てた日数には関係なく剥離片の調整のし易さは格段に異なります。

剥がし易さ、剥がし難さは、お尋ねの葉の厚さの問題よりも植物の種によって、また、生育条件によって異なると思います。

キュウリ等、高温で育てたものは、細胞と細胞の接着がとても弱くなっていて剥がそうとしなくても剥がれると言うか,バラバラになります。シロイヌナズナでも。。。

厚いものでも、ベンケイソウのような葉はとても剥がし易いというか簡単に皮層細胞と表皮とが分離してきますね。
具体的にはどんな葉の表皮を観察されたいのでしょう?

 風間 晴子(国際基督教大学)

(2)島崎先生からのご回答
 植物は何をお使いですか。植物によって表皮の剥離の容易さが大きく違いますので、できれば今の時期だとツユクサをお使いになることをお勧めします。春ならチューリップかソラマメです。菜の花も良いです。特別な剥離法があるわけではなく、基本的にはピンセットで表皮をつまんで剥がすだけですから、それで容易に剥ぐことのできる植物で多くの研究がなされています。
 どの植物を用いるかによってそのあとの研究の進展が大きく異なります。あなたの目的にあった植物種を見つける事がこの観察の出発点として最も大事なことですから、いろいろな植物の表皮の剥ぎやすさを、御自分で試されてはいかがでしょうか。わたしもそこいらの植物表皮を1日中剥いで回ったことがあります。その時、うまくいきそうだったのは、観葉植物としてふつうにみられ、赤や黄色の花をつけるポーチュラカ(和名を忘れました)、というものでした。この植物は少しかわった気孔をもっていましたので、御覧になれば面白いでしょう。

 島崎 研一郎(九州大学)
 
JSPPサイエンスアドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2009-07-03
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