一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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幹は光合成をするか

質問者:   一般   山歩き
登録番号3038   登録日:2014-03-23
 山歩きの途中、若いサクラの幹についた傷の中に緑色の層のようなものが見えました。家に帰って庭のサクラの枝や幹(直径約20cm)の樹皮を削ってみると同じような緑の層が確認できました。ちなみに樹皮をこの層の上で剥いで陽にかざしてみるとオレンジ色の光が透けてきます。
 また、他の種類の木の幹(緑色ではない)を調べたところ、かなりの木に同様の緑の層が見つかります。
 「登録番号2992」には緑色をした茎などは光合成をしているとありますが、サクラのような外樹皮(?)の下に緑の層をもった幹でも光合成をしているとしてよいのでしょうか。またその場合、どんな役割を担っていると考えられますか。
山歩き 様

再度のご質問をありがとうございます。

子供のころから気になっていたことなので、先ずは自分で確かめてみました。サクラの樹皮をはぎ取ると現われる皮層の緑色部分にはクロロフィルaとbが大量に含まれており、顕微鏡による観察では葉緑体をもつ密な細胞層の存在が認められます。樹皮はある程度の光を通すので、この細胞層では光合成が営まれていると考えられます。
文献を調べてみると、樹皮をはがすと緑色になっているのは良くあることのようです。ただし、光合成反応の場として見た場合のこの細胞層の特徴は、維管束系に近い位置を占めていることに加え、到達する光が比較的には弱いこと、ミトコンドリアで営まれる呼吸により二酸化炭素が供給される可能性があることなど、いくつかの際立った特徴があるように思われます。したがって、光合成反応の形式(二酸化炭素濃縮機構など)、また、その生理学的な意味に関しては、典型的な葉における光合成の場合とはかなり違っていることが考えられます。維管束系の働きへの関与なとが可能性としては考えられますが、このあたりはまだ十分には解明されていないように私には思えます。
“Trees”と言う専門誌に樹木の光合成について特集が組まれていることを東京大学の寺島一郎先生に教えていただきました。次の文献は、その特集号巻頭の論説ですので、お読みになられると参考になると思います。
(文献)H. Pfanz(2008) Bark photosynthesis. Trees 22: 137-138.
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2014-04-01
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