質問者:
一般
りんご
登録番号3039
登録日:2014-03-27
多数の人や本に、シナレンギョウの花は雌しべが長く、チョウセンレンギョウの花は雄しべが長い。それが区別点の一つであるとありました。みんなのひろば
シナレンギョウとチョウセンレンギョウの雄しべ雌しべ
花が咲きだしたので覗いてみると、私が見た範囲ではそのようなのですが、納得がいきません。
これらの木は雌雄異株ということなので、雄株は雄花で雄しべが長く、雌株は雌花で雌しべが長いのだと思うのですが。
両方なければ実がつかないと思います。
どちらかは分からなかったけど実がついたのを見た記憶があります。
りんご様
ご質問どうも有難うございます。名古屋大学大学院生命農学研究科の石黒澄衞先生に御回答頂きました。
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庭や公園に植えられているレンギョウの仲間は主にレンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウの3種類ですが、これらの交雑種もあり、一目で区別するのはなかなか難しいです。さて、レンギョウの仲間ではどの種にも、雄しべが長くて雌しべが短い花と、雄しべが短くて雌しべが長い花が咲きます。それぞれのタイプの花を雄花、雌花と書いている図鑑もたくさんあります。しかし、この雄花にも子房を持つ雌しべがありますし、雌花の雄しべにも花粉ができます。このことから、これらは厳密な雄花、雌花ではなく、どちらも雌雄両方の性質を持つ花(両性花)と見るべきでしょう(雄しべが長い花と雌しべが長い花の2タイプがある)。このような花を異型花と呼び、雄しべが長い花(雌しべが短い花)を短花柱花、雌しべが長い花を長花柱花と呼びます。短花柱花に吸蜜に訪れた昆虫が長い雄しべに触って花粉をつけ、次に長花柱花の雌しべに触ると受粉が起きて結実します。(逆に、長花柱花の短い雄しべの花粉が短花柱花の雌しべに運ばれることもあり、その場合でも結実するはずです。ただし「雄花の雌しべと雌花の雄しべは短く不稔」と書いてある図鑑もありますので、頻度は低いのかもしれません)。短花柱花が咲く株と長花柱花が咲く株は別々で、同じ株が両方の花を付けることはありません。なるべく自家受粉を避け、他の株と交配しようとする植物の知恵ですね。しかも、どちらの花でも雄しべと雌しべの距離はかなり離れており、自家受粉が起こりにくくなっています。また、レンギョウの仲間は自分の花粉が自分の雌しべについても結実しにくい自家不和合性という性質も持っているようです。
シナレンギョウにもチョウセンレンギョウにもそれぞれ短花柱花を付ける株と長花柱花を付ける株がありますが、ご質問の通り「シナレンギョウの花は雄しべが雌しべよりも短くチョウセンレンギョウの花は雄しべが雌しべよりも長い」と書いてある図鑑がありますし、実際にそのような株をたくさん見かけます。シナレンギョウは中国から、チョウセンレンギョウは朝鮮半島から日本に持ち込まれたもので、苗木屋さんはシナレンギョウもチョウセンレンギョウも挿し木で増やしますので、シナレンギョウはたまたま長花柱花の株ばかりが、チョウセンレンギョウは短花柱花の株ばかりが増やされてしまったのかもしれません。前にも述べたように短花柱花だけ、長花柱花だけではほとんど結実しませんので、実を見る機会はほとんどないことになります。それでも、まれに自家受粉で結実することがあるようですし、シナレンギョウやレンギョウがチョウセンレンギョウと雑種を作ることもありますので、りんごさんが見かけた実はそのようにしてできたものかもしれませんね。
参考文献 原色牧野植物大図鑑(北陸館)、山渓カラー名鑑 日本の樹木(山と渓谷社)
石黒 澄衞(名古屋大学大学院生命農学研究科)
ご質問どうも有難うございます。名古屋大学大学院生命農学研究科の石黒澄衞先生に御回答頂きました。
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庭や公園に植えられているレンギョウの仲間は主にレンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウの3種類ですが、これらの交雑種もあり、一目で区別するのはなかなか難しいです。さて、レンギョウの仲間ではどの種にも、雄しべが長くて雌しべが短い花と、雄しべが短くて雌しべが長い花が咲きます。それぞれのタイプの花を雄花、雌花と書いている図鑑もたくさんあります。しかし、この雄花にも子房を持つ雌しべがありますし、雌花の雄しべにも花粉ができます。このことから、これらは厳密な雄花、雌花ではなく、どちらも雌雄両方の性質を持つ花(両性花)と見るべきでしょう(雄しべが長い花と雌しべが長い花の2タイプがある)。このような花を異型花と呼び、雄しべが長い花(雌しべが短い花)を短花柱花、雌しべが長い花を長花柱花と呼びます。短花柱花に吸蜜に訪れた昆虫が長い雄しべに触って花粉をつけ、次に長花柱花の雌しべに触ると受粉が起きて結実します。(逆に、長花柱花の短い雄しべの花粉が短花柱花の雌しべに運ばれることもあり、その場合でも結実するはずです。ただし「雄花の雌しべと雌花の雄しべは短く不稔」と書いてある図鑑もありますので、頻度は低いのかもしれません)。短花柱花が咲く株と長花柱花が咲く株は別々で、同じ株が両方の花を付けることはありません。なるべく自家受粉を避け、他の株と交配しようとする植物の知恵ですね。しかも、どちらの花でも雄しべと雌しべの距離はかなり離れており、自家受粉が起こりにくくなっています。また、レンギョウの仲間は自分の花粉が自分の雌しべについても結実しにくい自家不和合性という性質も持っているようです。
シナレンギョウにもチョウセンレンギョウにもそれぞれ短花柱花を付ける株と長花柱花を付ける株がありますが、ご質問の通り「シナレンギョウの花は雄しべが雌しべよりも短くチョウセンレンギョウの花は雄しべが雌しべよりも長い」と書いてある図鑑がありますし、実際にそのような株をたくさん見かけます。シナレンギョウは中国から、チョウセンレンギョウは朝鮮半島から日本に持ち込まれたもので、苗木屋さんはシナレンギョウもチョウセンレンギョウも挿し木で増やしますので、シナレンギョウはたまたま長花柱花の株ばかりが、チョウセンレンギョウは短花柱花の株ばかりが増やされてしまったのかもしれません。前にも述べたように短花柱花だけ、長花柱花だけではほとんど結実しませんので、実を見る機会はほとんどないことになります。それでも、まれに自家受粉で結実することがあるようですし、シナレンギョウやレンギョウがチョウセンレンギョウと雑種を作ることもありますので、りんごさんが見かけた実はそのようにしてできたものかもしれませんね。
参考文献 原色牧野植物大図鑑(北陸館)、山渓カラー名鑑 日本の樹木(山と渓谷社)
石黒 澄衞(名古屋大学大学院生命農学研究科)
JSPP広報委員
東山哲也
回答日:2014-04-17
東山哲也
回答日:2014-04-17