一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブラシノライド

質問者:   自営業   kasikasi
登録番号3040   登録日:2014-03-30
植物体内のブラシノライドの生成量はどのような環境またはどのような刺激を与えると増えるのでしょうか?
一説には幼苗期に低温ストレスにあうと活性しやすいという話しもあるのですが如何でしょうか?
種子をブラシノライド溶液に浸すとその後ある程度の低温にも耐えうるというのは聞いたことがあるのですが、このような作業(溶液に浸すなど化学的処理)無しで低温に耐えうる植物を作ることは可能でしょうか?またその方法があれば教えていただけないでしょうか?
kasikasiさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ブラシのライド(BL)については、まず登録番号0254をご参照ください。ご質問はお答えするのが大変難しいものです。BLの構造の特殊性や生理作用の幅広さから生合成研究や施用試験研究は活発に行われてきて素晴らしい成果が挙げられてきましたが、BLの生体内レベルは低くまたその変動はあまり顕著でないため環境と生体内レベルの研究が少ないためです。
いわゆる施用試験で明らかにされてきたBLの生理作用は多岐にわたりますが、特に環境ストレス応答に対する効果、温度ストレス、水分ストレス、塩ストレスや病原体感染に対する抵抗性を増すことが注目されてきました。これらの結果は、BL生合成や作用の突然変異体を用いて抵抗性に関係すると思われる遺伝子の発現のレベルで確かめられてきたことで、農業においてBLをどのように施用したらどのような具体的効果が現れたか、といった実際的な研究は少ないのが現状です。
これまでに、BL生合成の経路はほとんど解明され、それぞれの経路に関わる酵素遺伝子も単離されて生合成調節の仕組みも分子レベルでかなり詳しくわかってきています。得られた重要な知見の1つに、BLの体内量は生合成と不活性化(分解を含む)のバランスでかなり厳密に一定に保たれていることがあります。BL量が多くなれば生合成速度を遅く(生合成に関与する遺伝子発現の抑制)したり、不活性化を促進(BLを酸化したり、分解する酵素遺伝子発現の促進)したり、逆にBL量が少なくなれば生合成遺伝子の発現を高めたりして量の恒常性を保っています。そのため、正常な生育条件下では外部環境の変化に伴って生合成や不活性化に関与する遺伝子発現は激しく活動していてもBL量自体は顕著に変化しないようです。これらのことは生合成や作用に関わる遺伝子が欠損した突然変異体の詳細な解析からは分かってきました。しかし、施用試験でBLが生理的効果を現わす濃度は非常に低いのでわずかの量的変化が生理的には大きく影響を及ぼします。
温度ストレスや塩ストレスなぢ現代農業が直面している問題解決に向けた研究はホットな課題で、世界中でいろんなレベルで活発に研究されています。低温耐性や塩耐性を作物に付与するにはどうしたらよいかについて、例えば耐性の無い作物と耐性の強い作物の遺伝子発現の違いを探索して、耐性に関与する遺伝子を見つけ出し、遺伝子操作によって耐性を付与しようとする研究がすすめられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-04-30
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