一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ジャガイモとサツマイモどちらが細胞同士が剥離しやすいのか?

質問者:   会社員   澤井尊史
登録番号3042   登録日:2014-04-11
今ジャガイモについて調べており、加熱した後のジャガイモ特有のホクホク感はデンプンの量や細胞同士の離れやすさが原因であるということがわかりました。
そこで疑問に思ったのですが、同じイモでもジャガイモとサツマイモではどちらが加熱した際に細胞同士が離れやすいのでしょうか?
また、それを数値化したりする実験方法はありますでしょうか?

ご存知の方がおられましたら、ご回答お願いできればと思います。
澤井様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。さてご質問の内容、とくに食感等に関する事柄は食品科学に関係することだと思いますので、そちらの分野の専門家にお尋ねになるのが一番いいでしょう。しかし、折角の本コーナーへのご質問ですので、植物生理学の観点から言えることだけをお伝えします。なお、この問題については、食感測定装置を開発された広島大学生物圏科学研究科櫻井直樹教授にも聞きましたが、多分既に質問されておられるようで、直ぐには返答は出来ないということらしいですね。そこでここでは、基本的なことだけを説明します。まず、ジャガイモとサツマイモは同じイモでも植物学的には別々の器官です。前者は茎で後者は根です。これらの器官を構成している細胞の接着の様式は基本的に変わらないと思います。蔬菜類など農作物は食する観点から言えば、味、色、香り、いわゆる食感などで特徴のある品種が次々と改良されて栽培されています。したがって、ジャガイモ対サツマイモといってもどの品種を取り上げるのかで異なります。ジャガイモでもベークドポテトにするのか、フライにするのか、チップスをつくるのか、マッシュドポテトにするのかなど、調理の目的でこれらの品種が選ばれるのは御存知だと思います。サツマイモでも同じです。品種の違いについてはすでに調べておられることでしょうが、 web 上で www.jrt.gr.jp/var/var.html(ジャガイモ) www.jrt.gr.jp/var_s/index_spv.html(サツマイモ)などのサイトをみていただければ分かります。
イモの力学的性質を決めるのは、組織の細胞壁の強度(厚さなど)や繊維の存在もありますが、含まれるデンプンの質、デンプン粒のサイズなども影響するでしょう。
アミロース(直鎖状)が多いのか、アミロペクチン(分岐が多い)が多いのかではいわゆるモチモチの程度も異なります。お米でもうるち米ともち米(アミロペクチンが多い)で
も食感は異なりますね。カタクリとジャガイモのいわゆる片栗粉の違いはデンプン粒のサイズが影響しています。
ホクホク感というのはある意味で主観的なものですし、なにか一つのことが原因で示される性質ではありませんので、数値化することができるかどうかは難しいのではない
でしょうか。
JSPPサイエンス・アドバイザー
勝見 允行
回答日:2014-04-15