一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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櫻の花があれほどたくさん咲くわけ

質問者:   教員   サクランボ
登録番号3058   登録日:2014-05-10
 毎年毎年櫻の花がゴージャスに咲くのを見て、ふと思いました。櫻の花はなぜあんなにたくさん咲く必要があるのでしょうか?あの花に見合うほどの蜂もこないし、風で受粉しているのでしょうか?特にソメイヨシノは、種では増やせないと聞きますが、あの花は何のための花でしょうか?毎年疑問です。教えていただけたらうれしいです。
サクランボ様

ご質問どうも有難うございます。
九州大学理学部の矢原徹一先生に御回答頂きました。

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ソメイヨシノは人間が改良した園芸植物ですから、花がたくさん咲くのは、ある程度は人間が園芸目的で改良した結果です。ただし、野生種のサクラ(たとえばヤマザクラ)でも、たくさんの花が咲き、果実を結ぶのはその一部です。サクラ以外でも、花のすべては結実しないのが一般的です。その理由は、多くの場合、「花」は結実して「種子親」(動物に例えれば母親)になるだけでなく、他の個体の「花粉親」(動物に例えれば父親)にもなるからです。「種子親」になる上では、花粉を運ぶ昆虫(ミツバチなど)が1〜2回訪問して、花粉をつけてくれれば、通常は十分です。

しかし、「花粉親」になるためには、花粉を運ぶ昆虫に何回も来てもらう必要があります。この理由は主に二つあります。第一に、花粉はミツバチなどの餌になるので、植物は少しずつ花粉を出して、できるだけ餌として食べられてしまう数を減らし、他個体の花に届けられるように工夫しています。サクラ類の花におしべがたくさんあり、毎日、少しずつ開くのはこのためです。第二に、ミツバチなど花粉を運ぶ昆虫を誘引するための競争があります。花数が少ないと、その木にはあまり昆虫がやってきません。
そうすると、花粉を受け取って種子を結ぶことはできても、他の個体の「花粉親」になる点では、花数が多い個体よりも不利になります。このように、「花粉親」になるうえでの競争があるので、木はたくさん花をつけるのです。

矢原 徹一(九州大学理学部)
JSPP広報委員
東山哲也
回答日:2014-05-12