質問者:
教員
ken
登録番号3063
登録日:2014-05-15
いつも参考にさせて頂いております。みんなのひろば
アブラナの雄しべの長さ
中学校で理科を教えており、生徒からの質問でわからない部分があったので質問させていただきました。
「植物のからだのつくりとはたらき」という単元で、花の構造の教材としてアブラナを用いています。
すると、生徒から「なぜアブラナの雄しべは長いものと短いものがあるのか」という質問がありました。四強雄しべはアブラナ科の特徴であることを考えると、何かしら生物学的意義があるのだろうと考えますが、いろいろ調べても「長いものと短いものがある利点」については分かりませんでした。
この構造には何かしら意義はあるのでしょうか。それとも中立進化的な、あまり利点は無いけれど生じた形質なのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
kenさま
ご質問どうも有り難うございます。アブラナ科植物を研究されている東北大学の渡辺正夫先生に御回答頂きました。
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アブラナ科植物、作物を30年ほど扱っているということから、回答申し上げます。アブラナ科植物の花の基本数というのは「4」になります。蕚片が4枚、花弁も4枚、という形です。では、なぜ、雄しべが4の倍数になってないかということなのですが、何かの本で読んだことがあるのですが、ご質問にある、2本の短い雄しべが現在は向かい合って存在していますが、昔は、それが4本だったのではないか。つまり、長いのが4本と、短いのが4本ということになります。
では、なぜ、現在、短いのは4本でなくて、2本なのか、実験的には証明されてないですし、わからないことですが、渡辺が思うに、この2本は進化の過程でなくなるという運命にあるものではないかと思います。実際、アブラナを栽培していると、開花の初期には短い2本の先にも葯が存在して、受粉に使えますが、植物体が老化して、花のシーズンが終わる頃には、短い2本の先に葯がないようなものが表れてきます。長い方の葯がなくなるようなことはあまり見かけません。栄養の配分的にも、長い4本の方が強勢だということだと思います。
1つの考え方として、4本の長いものと4本の短いものがあり、そのうちの短いものが受粉に対して貢献度が低いことから、2本になり、それも消えてしまう過程の途中を見ているのではないかと言うことです。
もう1つは、長さがちがう葯の位置があることは、異なる花粉をつけるときに、有利になることがあります。このような例として、サクラソウ、ソバなどに見られる異形花型の自家不和合性という現象があります。異形花型の自家不和合性については、「登録番号2416」の日本のサクラソウの受粉についてということで、詳しく述べられていますので、そちらを参考にして下さい。一方、アブラナ科植物の多くは、異形花型でなく、同形花型自家不和合性、つまり、S遺伝子型がちがっても花の形態は変わりません。ですので、異形花型とは本質的に異なりますが、それでも、訪花昆虫が様々な行動をすることで、昆虫の色々な場所に花粉が着きます。そうしたより、異なる場所に花粉をつけて、それを異なる遺伝子型に運ぶという点では、葯の位置が高いものと低いものがある方が、有利ではないかと思います。
これまでの研究などを踏まえて考えると、こうした2点ではないか、あるいは、この2つが相互作用して、機能しているのではと思います。アブラナ、菜の花のシーズンも終わりかけていると思いますが、まだ、花を見かけることがあれば、そんな風な観点で改めて観察されてみてはいかがでしょうか。
渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
ご質問どうも有り難うございます。アブラナ科植物を研究されている東北大学の渡辺正夫先生に御回答頂きました。
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アブラナ科植物、作物を30年ほど扱っているということから、回答申し上げます。アブラナ科植物の花の基本数というのは「4」になります。蕚片が4枚、花弁も4枚、という形です。では、なぜ、雄しべが4の倍数になってないかということなのですが、何かの本で読んだことがあるのですが、ご質問にある、2本の短い雄しべが現在は向かい合って存在していますが、昔は、それが4本だったのではないか。つまり、長いのが4本と、短いのが4本ということになります。
では、なぜ、現在、短いのは4本でなくて、2本なのか、実験的には証明されてないですし、わからないことですが、渡辺が思うに、この2本は進化の過程でなくなるという運命にあるものではないかと思います。実際、アブラナを栽培していると、開花の初期には短い2本の先にも葯が存在して、受粉に使えますが、植物体が老化して、花のシーズンが終わる頃には、短い2本の先に葯がないようなものが表れてきます。長い方の葯がなくなるようなことはあまり見かけません。栄養の配分的にも、長い4本の方が強勢だということだと思います。
1つの考え方として、4本の長いものと4本の短いものがあり、そのうちの短いものが受粉に対して貢献度が低いことから、2本になり、それも消えてしまう過程の途中を見ているのではないかと言うことです。
もう1つは、長さがちがう葯の位置があることは、異なる花粉をつけるときに、有利になることがあります。このような例として、サクラソウ、ソバなどに見られる異形花型の自家不和合性という現象があります。異形花型の自家不和合性については、「登録番号2416」の日本のサクラソウの受粉についてということで、詳しく述べられていますので、そちらを参考にして下さい。一方、アブラナ科植物の多くは、異形花型でなく、同形花型自家不和合性、つまり、S遺伝子型がちがっても花の形態は変わりません。ですので、異形花型とは本質的に異なりますが、それでも、訪花昆虫が様々な行動をすることで、昆虫の色々な場所に花粉が着きます。そうしたより、異なる場所に花粉をつけて、それを異なる遺伝子型に運ぶという点では、葯の位置が高いものと低いものがある方が、有利ではないかと思います。
これまでの研究などを踏まえて考えると、こうした2点ではないか、あるいは、この2つが相互作用して、機能しているのではと思います。アブラナ、菜の花のシーズンも終わりかけていると思いますが、まだ、花を見かけることがあれば、そんな風な観点で改めて観察されてみてはいかがでしょうか。
渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPP広報委員
東山 哲也
回答日:2014-05-22
東山 哲也
回答日:2014-05-22