一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根粒菌の窒素固定についてのやさしい解説

質問者:   一般   non
登録番号3068   登録日:2014-05-27
ケヤマハンノキなどの樹木が、崩落地などの貧栄養環境にも、いち早く侵入し、成長できるパイオニア植物となれるのは、根に根粒菌を持っており、それが空中窒素を固定して栄養にしてくれるからだ、という説明を小学生にしたところ、土の中の根についている菌が、どうやって「空中の窒素」を固定できるのか、と逆質問を受け、回答できずに困ってしまいました。このコーナーで検索をかけますと、登録番号2600に同意の質問がありましたので、その回答を読みましたが、難しくてよく理解できませんでした。「根が発達する土壌中には、空樹の隙間がたくさんあるため、根粒菌はその土壌中の空気を利用して窒素固定をしている」という理解でよろしいのでしょうか?また、葉から吸収された窒素が、根に運搬され、そこでまた窒素固定が行われる、という仕組みも実際にあるのでしょうか?小学生にもわかるレベルでの解説をお願い致します。
non様

「みんなのひろば」への御質問どうも有難うございます。
根粒形成の研究をされている基礎生物学研究所の
川口正代司先生に御回答頂きました。

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根粒菌は、ふだん土の中で生活しているのですが、自分が共生できる植物と出会うと、植物の根の細胞の中に入って、窒素固定をする酵素(ニトロゲナーゼ)の遺伝子を発現するのです。それによって「空気中の窒素」を固定します。土壌中には、隙間があってそこに窒素分子がありますが、面白いことに窒素分子は根の細胞の中にまで入ってくるのです。

また根粒菌が植物の細胞に入ってくると、ヘモグロビンがたくさん発現して、細胞は赤くなります。なぜかというと、窒素固定する根粒菌のニトロゲナーゼは酸素に弱いため、植物がヘモグロビンを発現することで、酸素を吸収してニトロゲナーゼの働きを守ってやるのです。

「また、葉から吸収された窒素が、根に運搬され、そこでまた窒素固定が行われる、という仕組みも実際にあるのでしょうか?」のご質問について:

すごいアイデアですね。一度も考えたことがありませんでした。でも、窒素分子は細胞の中に入ってくるので、空気中の窒素分子が葉の細胞の中に入って、それが根に運搬され、窒素固定するというのはあるのかもしれません。証明できたらすごいですね。

川口 正代司(自然科学研究機構・基礎生物学研究所)
JSPP広報委員長
松永幸大
回答日:2014-06-09
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