一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ムラサキカタバミの繁殖

質問者:   一般   さき
登録番号3070   登録日:2014-05-29
庭の除草をした時にムラサキカタバミ数本あり、花が咲いていていたので残しました。
その後除草した庭の各所からムラサキカタバミが生えてきました。
もともと他の雑草のなかに数本あっただけでしたが一気に他の雑草を圧倒しています。
これまでわが家の庭にムラサキカタバミがこのように繁殖したことはありません。
種ではなく鱗茎で増えるそうですが、この草の葉は目立ちます。除草の時にはほとんどありませんでした。
なぜ一気にムラサキカタバミが繁殖したのでしょうか?
さき様
 みんなのひろばへのご質問有り難うございました。さき様からご質問を頂く少し前に、東京大学の塚谷裕一先生の著書「スキマの植物図鑑」(中公新書)でムラサキカタバミがスキマに生えていることを知り、どうやってスキマに入り込むのかと思っていた所でしたので、良い機会とばかり塚谷先生にお聞きしました。塚谷先生が学生実習のためしばらく大学を離れていたため、ご回答が遅くなってしまいましたが、塚谷先生からのご回答をお届けします。私も勉強させて頂きました。


塚谷先生からのご回答
さきさん
お問い合わせありがとうございます。
ムラサキカタバミは増えますね。一気に増えた理由はケース・バイ・ケースなので確証はありませんが、花が咲き始めていたということからすると、その数本残っていた株にはすでに、木子(鱗茎の分球した子ども)が着いていたのではないかと思います。よく太った株を丁寧に抜いてみると、ムラサキカタバミの場合、葉をつけている親球の基部側に、多数の小さい鱗茎がごっそりと着いているものです。これが何かの拍子であちこちに散らばったのではないでしょうか。大雨の時に水流に乗ったり、モグラが穴を掘るのにつれてなど、いろいろな理由があり得ます。

 例えばムラサキカタバミは親の鱗茎が太るとそのせいで地中から上に出てきてしまいます。加えて、根元にできた木子が太ればさらに株を押し上げることになって、鱗茎は地上に露出しがちです。しかしムラサキカタバミとしても、そのまま鱗茎が外へ出て行ってしまうのも困りますから、対処をします。どうするかというと、親球の真下にある根が一旦太って、それから縮むことで、親球をまた地面の下に戻そうとします。こういう根を牽引根といいます。この牽引根の力で親球が地中に戻る際、木子が外れて散らばったのかもしれません。
 もともとムラサキカタバミは繁殖力が強いので、増えすぎないように管理するには、株の状態を見張ってこまめに間引くしかないでしょう。ちなみに牽引根は、縮む前の、最もよく太った状態の時は甘みがあってさくさくしていて、ちょっと梨のような食感がします。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 教授) 
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2014-06-12
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